競馬のハズレ馬券は必要経費!?の地裁判決

平成25年3月25日付けのブログでご紹介させて頂きました「競馬のハズレ馬券は必要経費!?」の判決が、平成25年5月23日に出ましたのでご紹介させて頂きます。

裁判の概要
裁判の概要を改めて確認しますと、東大阪市に住む競馬愛好家の男性が市販の競馬予想システムを改造し、100万円を元手に3年間に総額で約27億7千万円の馬券を購入し、約30億1千万円の払戻しを受けておりましたが、まったく申告をしておらず、所得税法違反の罪に問われていたものです。

国税局側の主張
大阪国税局は、配当金から当たり馬券の購入代金を差し引いた約29億円を『一時所得』として認定し、約5億7千万を脱税したとして所得税法違反の罪で大阪地検に告発しました。
その後、平成25年2月7日に論告求刑公判が大阪地裁で行われ、検察側は論告で「ハズレ馬券が経費にならないことを認識していたのに、本来納税すべきものを新たな馬券購入に充てたのは自業自得だ」などと指摘し、懲役1年を求刑しました。

男性側の主張
一方、男性側は、実際の儲けをはるかに超える課税に対し、「ハズレ馬券も必要経費に含めるべき」として課税の違法性を主張しています。

裁判の争点
今回の裁判の争点は一時所得の計算上、「ハズレ馬券も必要経費に算入することができるか」という点です。

判旨
大阪地裁は、競馬の払戻金を「一般的には一時所得」としながらも、「一種の資産運用」と判断し、「雑所得」と認定しました。また、「営利を目的とし継続的に馬券を購入した場合は、外れ馬券の購入費も必要経費になる」として、男性の所得金額を約1億6千万円、所得税額を5,200万円として懲役2ヶ月(執行猶予2年)の判決を言い渡しました。

今後の影響
1.所得税法上の規定
所得税の規定を確認すると、法律上では、競馬の払戻金について「一時所得」(法第34条)であると規定されており、これまで一般的には「一時所得」で計算するものとされております。また、必要経費として控除できるものについても、「その収入を得るために直接要した金額」(法37条)と定義されており、今回の様な競馬の払戻金の場合には、必要経費には該当としないことになります。

2.担税力の問題
男性側の主張にもありましたが、今回の裁判の争点のひとつに「担税力」もあげられております。「担税力」は、税務での重要な考え方のひとつです。
通常の税金の課税に際しては、「担税力」があることに着目し、「担税力」があることに対して課税するのが一般的な考え方です。
上記1.のとおり、厳密に法解釈をすると、今回の裁判の様にやみくもに所得金額が多額となってしまい、「担税力」の無い方に税負担をさせる形になってしまうため、実態にあった法解釈・判断が必要かと思われます。
ただし、「担税力」の考え方は、固定資産税の様に単純にキャッシュフローに紐付かない場合も当てはまりますので、一概に金額の多寡で決められないという難しい部分も有しています。

3.公平性の問題
今後一番問題となるのは、「公平性」の問題だと思われます。
まず、今後の裁判の行方次第だとは思いますが、原則:『一時所得』、例外:『雑所得』の線引きが非常に難しいと思われます。『営利を目的』ということであれば、場合によっては『事業所得』という考え方も出て来ます。ただし、何をもって『事業』というかということにもなりかねませんので判断は非常に厳しいと思われます。
また、課税の公平性の問題があります。今回の男性は申告をしなかったため大阪国税局へ告発されましたが、一定の条件の場合には匿名にて払戻金を受け取ることが出来ます。払戻金が90万円を超えていても申告をしないことが可能になりますので、その対策が必要になると思われます。

この事件は、一時所得・雑所得の考え方に大きく影響を与えることになると思います。今後、課税庁側の控訴も予想されるため、確定判決が出されるまで注目して見守りたいと思います。

渋谷事務所 戸田盛通

 

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