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生保年金に係る最高裁判決(平成22年7月6日)について

 今回は平成22年7月6日付の最高裁判決で、年金型生命保険二重課税が認定されたことについて解説します。

 まず年金には国民年金や厚生年金といった公的年金と個人年金保険契約に基づく年金などの私的年金があります。公的年金の加入者の
遺族が受け取る遺族年金には相続税も所得税もかからないことになっています。

この判決で問題になっているのは私的年金についての取り扱いで、遺族が取得する年金受給権に対する相続税の課税とその後
受け取る年金に課税される所得税の課税二重課税ではないかという点です。

 この保険は加入者の死亡後に遺族が年金を受け取るタイプの商品であり、遺族は加入者の死後10年間年金として分割して特約年金の
支払を受ける権利
を取得しました。これを年金受給権と言います。年金受給権の相続税の対象となるときの価格の評価
は、年金の支払総額や支払期間等により異なります。今回のケースでは予定の年金総額のうち6割相当が相続税の課税を受けて
います。

 これに加えて毎年年金を受給する度に、掛け金分などの控除を除き、所得税の課税を受けています。これはいわゆる運用益部分に
対する課税
となっており雑所得となります。

 今回争点となったのはこの毎年受給する年金部分に対する課税で、最高裁は10年間に分け年金として遺族が受け取る金額のうち、
一回目の支給分にかかった所得税を「違法な二重課税に当たる」と判断しました。一回目の支給分には運用益が含まれ
ない「元本」と判断したのです。元本部分には既に相続税が課税されているので、これに課税した所得税は二重課税であるという判断です。

 今後の注目点としては、2回目以降の支給分についてどのような判断が下されるのかが明らかになっていないこと。似たような金融
商品にもこの問題が広がる可能性があることがあげられ今回の判決の影響は小さくありません。今後の国の対応や具体的な還付の方法につき
ましては、国税庁ホームページを随時ご確認下さい。

参考資料:最高裁判例
国税庁ホームページ  URL:http://www.nta.go.jp/

川崎事務所 橘 智昭

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