
消費税の経理処理方法による税務上及び経営管理上の相違点
来年(2019年)の10月に消費税率の引き上げが予定されておりますが、企業経営者の皆様におかれましては、この引き上げは、サービスや商品の価格設定、経理処理による取扱にも大きな影響を及ぼす可能性が大きいのではないでしょうか。
今回は、消費税の経理処理方法の違いによる税務上及び経営管理上の取扱いの違いについてご紹介します。
1.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得等して事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
この規定の取得価額の判定をする際に、消費税の経理処理方法により、適用できるか否かの判定が変わります。
例)税込302,400円(税抜280,000円)/台のパソコンを1台取得して事業の用に供した場合
①税込経理の場合
税込金額を基礎として30万円未満か否かの判定を行うため、302,400円≧300,000円となり、この特例の適用を受けることはできません。通常どおり減価償却を行うことになります。
②税抜経理の場合
税抜金額を基礎として30万円未満か否かの判定を行うため、280,000円<300,000円となり、この特例を受けることで一時の損金とすることができます。
2.交際費の損金不算入の特例
一定の中小法人が、交際費等の支出を行った場合には、一定の飲食交際費の50%相当額と、年間800万円までのいずれか多い金額までは損金算入することができます。
この場合に、年間の交際費が税込810万円(税抜750万円)※だった場合の損金不算入額は以下のとおり計算されます。
①税込経理の場合
810万円-800万円=10万円(損金不算入)
②税抜経理の場合
750万円≦800万円 ∴損金不算入額なし(全額損金算入)
※飲食交際費の適用は考慮しておりません。
3.業績管理における影響
貸借対照表や損益計算書を作成するためには経理処理を行うことになりますが、消費税の経理処理方法により、これらの帳簿の形態も変わってきます。
税込経理の場合には経理処理において取引が税込金額にて記帳されますが、税抜経理の場合には、取引が税抜金額にて記帳されます。
例)年間売上高 税込1億800万円(税抜1億円)、年間仕入高 税込5,400万円(税抜5,000万円)の場合(在庫は0と仮定)
<税込経理の場合> <税抜経理の場合>
売上高 1億800万円 売上高 1億円
仕入高 5,400万円 仕入高 5,000万円
売上総利益 5,400万円 売上総利益 5,000万円
租税公課 400万円(消費税) 租税公課 0万円
営業利益 5,000万円 営業利益 5,000万円
このように、シンプルな例で見てみると、算定結果である営業利益額というゴールは変わりませんが、その過程での表示方法は大きく変わることが分かります。
税込経理の場合には消費税を損益に含めて表示することになるため、消費税が損益計算書に表示されます。それに対して税抜経理の場合には消費税を損益表示に含めて表示しないため、原則として損益計算書には消費税が経費として表示されません。
二つを比べて見ると、当然といえば当然なのですが、税込経理の方が売上高が8%多く表示されます。前年対比で業績比較をする際に、経理処理を変更すると売上や経費の前年比較も変わりますので、経理処理方法の変更をご検討の際は、その点ご留意下さい。
税務面や業績管理に関するご相談がございましたら、お気軽にコンパッソ税理士法人までご連絡下さい。
渋谷事務所 川上 大輔