海外に住む親族を扶養控除等の対象にする場合

国外居住親族に係る扶養控除等の適用が厳格化されます
平成28年分以後の所得税に係る確定申告、年末調整において、日本国外に居住する親族について扶養控除や配偶者控除、障害者控除の適用を受ける場合には、1と2の書類を添付又は提示しなければならないことになりました。

1.親族関係書類
納税者の親族であることを確認できる(1)又は(2)の書類
   (1)戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその親族の旅券の写し
   (2)外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(その親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります)
2.送金関係書類
納税者が親族の生活費等に充てるための支払を行ったことを確認できる書類(クレジットカード利用明細書、送金依頼書)

厳格化の背景~会計検査院からの指摘~
制度の厳格化の背景には、会計検査院の報告書があります。
会計検査院は、その平成25年度決算検査報告 第4章第4節『国民の関心の高い事項等に関する検査状況』の中で、『国外扶養者については、国内扶養者と異なり多数の親族を扶養控除の対象としているのに、適用要件を満たしているか十分な確認ができていないまま扶養控除が適用されている』との所見を表明しました。つまり〝扶養控除制度本来の目的から外れた運用がされているので、公平性を確保できる制度に変える必要がある″と指摘したのです。

その報告書上、フィリピン共和国に国外扶養親族を21人持つ給与所得者Aの事例が載せてありましたので、紹介させて頂きます。
事例
日本人である給与所得者Aは、平成24年分の所得税の確定申告にあたり、扶養控除やその他の控除を合わせて約1,062万円の所得控除を適用して課税所得金額を計算した。その結果、所得税は0円、源泉所得税約111万円の還付を受けた。
Aの扶養親族は合計22人で、その内訳は次のとおり。
    実母1人(日本に居住)
    親族21人(配偶者の母国フィリピン共和国に居住)
フィリピン共和国に居住する21人のうち20人は二親等・三親等の姻族で、13人は青年層。提出された送金証明書によると、Aが同年中にこれら21人分の生活費として送金した額は約73万円であった。
あくまで簡便的な計算ですが、Aは、年間約73万円の生活費の負担を負うことで、38万円×21人=796万円の所得控除を受けたことになるわけです。確かに、課税当局から「課税逃れをしているのでは?」と疑いの目で見られるかもしれません。

給与所得者Aがフィリピンに住む親族を扶養控除の対象とする方法
それでは、適用が厳格化される平成28年の所得税について、Aはどのような点に注意して書類を整えれば、扶養控除の適用を受けることができるのでしょうか? 
前提
フィリピンに住む21人の親族は、諸事情により収入がほとんど無く、Aからの送金でなんとか生活をしている。日本で働く1人の稼ぎが、母国に住む家族(しかも大家族)の生活支えており、実態として生計を一にしている。
 
添付書類の注意点
1.親族関係書類
   前述の通り、(1)戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその親族の旅券の写し、又は(2)外国政府又は外国の地方公共
   団体が発行した書類の添付が必要です。これら書類が外国語で作成されている場合は、翻訳文を添付しなければなりません。
2.送金関係書類
   こちらも前述の通り、クレジットカード利用明細書又は送金依頼書の添付が必要です。
   国外居住者に対する送金を一人の代表者にまとめて行っている場合には、その代表者一人分の扶養控除しか認められませんので、21人それぞれへの
   送金関係書類が必要となります。また、現金を手渡ししている場合は送金関係書類が無いことになり、扶養控除等を適用することはできません。

他人ごとではない?
Aのように海外に住む親族を扶養控除等の対象にするケースは、それほど一般的ではないかもしれませんが、例えば、海外の大学に通っているご子息を扶養控除の対象として確定申告する場合には、証明書類の添付・提示が義務付けられますし、外国人労働者を数多く採用している企業においては、あらかじめ従業員に制度の厳格化について周知しておく必要があります。

ご不明な点、お困りの事などありましたら、コンパッソ税理士法人までお気軽にお問合せ下さい。

出典:国税庁HP 国外居住者に係る扶養控除等のQ&A
    会計検査院HP 平成25年年度決算検査報告の本文

横浜青葉事務所 渡邉公美子

 

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