株価対策まで考えたトレンド予想~平成29年度税制改正大綱より~

平成28年12月7日の日経新聞に、「中小の相続・贈与税軽減」といった見出しで、中小企業の株価算定式の改正についての記事がありました。その内容を要約すると次の3点となります。

新聞記事にあった改正案のポイント
1.株価に影響を与える利益、配当、純資産に対する割合を「3対1対1」から「1対1対1」へ変更する。
2.似た業種の上場企業の株価からの影響について、相場の上昇の影響を和らげる措置を取り入れる。
3.2017年1月の相続・贈与より適用する。

そして最後に、「後継者が自社株を引き継ぐときの税負担が平均10%ほど減るという」と言葉で締めくくられていました。

一見、事業承継に係る減税策との論調なので、事業者の皆様にとって喜ばしい改正かと思いきや、これには落とし穴があります。
確かに、一部の方々にとっては減税方向の改正案となりますが、事業承継に係る多額の税負担に悩まれている事業者の多くの方々にとっては、大増税となるおそれがあります。ためしに、私が関与をさせて頂いている会社様の株価について、仮に改正案の趣旨を踏まえて試算した結果、次のとおりになりました。

1.サービス業
  (特徴)企業規模(大)、収益(高)、配当(高)、純資産(大)
     類似業種比準価額 現行制度129,000円/株  →  改正案157,000円/株(約2割増加

2.食品製造業
  (特徴)企業規模(大)、収益(高)、配当(無)、純資産(大)
     類似業種比準価額 現行制度2,700円/株  →  改正案4,600円/株(約7割増加

3.サービス業
  (特徴)企業規模(中)、収益(高)、配当(無)、純資産(小)
     類似業種比準価額 現行制度54,000円/株  →  改正案31,000円/株(約4割減少

まだまだサンプル数が少ないですが、傾向を整理すると、高収益体質であっても、まだまだ成長過程にあり、純資産額が小さな会社であれば、改正案による減税方向の恩恵を受けやすいであろうことが予想されます。しかし、企業規模が大きく、成熟した純資産額の大きな会社、高配当をしている会社にとっては、改正案が実行された場合には、増税方向に振れるであろう事が予想されます。

ここまで考えて危惧したことがあります。それは、本当に事業承継の税負担に苦しんでいる、過去から地域を支えてきた優良企業ほど更なる増税に苦しみ、まだ事業承継問題に直面していない会社ほど、改正案の恩恵を受けるのではないかと。

今後の株価対策まで考えたトレンドを予想していくと、たしかに、企業の内部留保をはき出させることは、経済対策の一環にもなりますが、過去のバブル崩壊やリーマンショックのような危機に直面した時には、企業経営が危ぶまれる危険も生じます。さらなる難しい選択が、事業者の皆様方には課されそうです。今回の新聞記事を見て、より一層、事業者の皆様方のサポートを為ねばと、気持ちが引き締まる思いが致しました。

出典:日経新聞 平成28年12月7日

川崎事務所 佐々木謙

 

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