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株主優待について その2

前回に引き続き「株主優待制度」についてご紹介します。今回は、法人の取扱いとして株主優待券等の支出の判例がありますので、その判例に沿って説明をします。

判例1 遊園地入場券に係る事例
【概要】
運営する遊園施設への入場及び施設の利用等を無償とする優待入場券のうち、その遊園地施設の役員が各企業に対して交付されたもの、マスコミ関係者及びその家族に対して交付されたものは、交際費に該当するとされた事例です。

【主張】
・遊園地側
  この優待入場券の配布は、広告宣伝及び販売促進のための費用である。
・税務署側
  この配布先について、事業関係者等に配布しているため交際費である。

【判旨】
「優待入場券を発行してこれを使用させていたことについては、遊園地施設側の遂行する事業に関係のある企業及びマスコミ関係者等の特定の者に対し、その歓心を買って関係を良好なものとし、遊園地施設側の事業を円滑にすべく、接待又は供応の趣旨であるとされたと認められるのが相当である」と判決しています。この事例の判決について、役員の知り合い、つまり特定の関係にある者に対する贈答等に類する行為と認められ、交際費の要件を満たすと判断されました。

判例2 株主優待品の送料に係る事例
【概要】
株主優待品の株主への送料は、贈答のための費用であり、株主は優待品の受領という利益を受けるのであるから運送費ではなく交際費とされた事例です。

【主張】
・優待品を送付した法人側
  この送料は、広告宣伝的性質の支出である。
・税務署側
  株主への優待品を送るための支出であり、今後の株主との関係を良好にするための費用であることから交際費に該当する。

【判旨】
「株主優待品の送付は、安定的な株主数を維持する目的で請求人の株主に対して行われていたといえ、事業関係者である株主の歓心を買って関係を良好なものとし、将来にわたって株主を奨励するものということができる。そして、本件送料は、株主への送付、すなわち贈答のための費用であり、本件株主優待品費用の支出と同様に株主が便益を享受するといえる。」と判決されています。
株主優待品は、株主(事業に関係あるもの)への接待又は供応であり、株主の歓心を買うことで事業を円滑に進めるためのものであって、交際費の要件を満たすということです。

株主優待制度は、原則、株主の増加、維持が期待できることや優待券等を交付して株主が顧客となり、売上増加が見込まれることを目的として、株主に対し優待券等を配布しています。そのため、前回ご説明した交際費の3要件に該当し、交際費として取り扱うケースが多くなると感じています。
しかしながら、必ずしも交際費に該当するとは限りません。広告宣伝費などの性質を有するものは、交際費には含まれないこととされています。例えば、カレンダー、手帳、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用や不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は、交際費等には含まれないものとされ、広告宣伝費となります。
株主優待費用をどのように処理するか明確な規定はありませんが、多くの企業が「交際費」として処理しているようです。しかし、株主優待を株主向けの販売促進として捉えている企業は「広告宣伝費」として処理し、食事券や割引券を配る企業は「売上値引」として処理しているようです。そのため、各事案の事実関係に照らし、交際費か、それとも広告宣伝費などか、よく判断しなくてはいけません。

次回、株主優待券等を受け取った株主(個人)の取扱いについてご紹介します。

出典:税務弘報

川崎事務所 坪崎順

 

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