昨今の税務争訟の動向について

5月9日に東京と大阪で注目の税務争訟の判決が出されました。以前から注目されていた事件ですので、あらためて概要と今後の動向について触れてみたいと思います。

大阪高等裁判所 平成26年5月9日判決
以前のコンパッソ税理士法人のブログ(平成25年3月25日付)でもご紹介しました「競馬のハズレ馬券は必要経費か?」が争われた所得税法違反事件について、控訴審が大阪高裁で開かれ、一審の大阪地裁の判決を支持し検察側の控訴を棄却しました。

判決では、払戻金は「一時所得」であり所得から差し引ける経費は当たり馬券の購入費のみであるという検察側の主張に対し、営利を目的とした継続的行為にあたると判断し、雑所得として外れ馬券の購入費も経費として認めました
現在、同様の事件が札幌国税局で発生しており、東京地裁で争訟が提起されております。 大阪高裁の判決が確定判決ではないため、東京地裁の争訟へどの様な影響を与えるかは不明です。

所得税の確定申告を受託させて頂いていても、近年のインターネットの普及により職業に対する概念が大きく変化し、既存の所得税の体系にあてはめるのが難しい事例も多く見受けられるようになりました。その様な状況において判断の指針となるのは、やはり「担税力」・「公平性」といった言葉がキーワードになってくると思われます。このキーワードを中心に真摯に判断を重ねて行けば間違った結論は導き出されないのではと考えております。
いずれにしましても、大阪高裁・東京地裁の判決確定するまで、今後の動向に注目したいと思います。

東京地方裁判所 平成26年5月9日判決
IBMの持ち株会社が東京国税局から約4,000億円の申告漏れを指摘されたことに伴う追徴課税の取消を求めた争訟が開かれ、約1,200億円の課税を取消する判決が東京地裁で出されました。

今回注目されたのは、連結納税制度を利用した取引です。持ち株会社は、米国IBM社から日本IBM社の全株式を購入し、日本IBM社へその一部を安く売却したことにより、約4,000億円の赤字が発生しました。連結納税制度の場合、企業グループ間での黒字・赤字が相殺されます。結果的に日本IBM社の黒字と持ち株会社の赤字が相殺され、税負担が縮小されるという利益を享受することとなりました。

留意すべき点としてはその税額です。まず、普段目にしたことがない多額さに驚かされますが、一方で、還付金に対する利息はどれくらいなのだろうか?と大きなお世話ですが心配になります。こちらについても、納税した税金の中から支払われますので見過ごせる内容ではないと思われます。

なお、争訟の行方ですが、最終的には、損失を出すような売却をした意図・持ち株会社の事業目的等、個別の事実認定の積み重ねになりますので、一般論として今後の実務に参考となる部分は少ないかも知れません。 
連結納税制度自体は、中小企業も導入が浸透しつつあります。そういった意味でも引き続き動向に注目して行きたいと思います。

今回ご紹介した事件は、2件とも課税庁側が敗訴した事例ですが、今年の3月には企業側が敗訴した事例も生じております。連結納税制度、企業再編税制など税制が複雑化する一方で、最終的な事実の証明は事実認定の積み重ねに頼ることになります。
後日になって、課税庁だけではなく、外部の利害関係者からあらぬ疑念を持たれない様にするためには、「意思決定者」・「意思決定のルート」・「意思決定に至った経緯」・「職務権限の範囲」等を議事録・稟議書の様な書類で証明出来るようにしておく必要があります。
その様なアドバイスもコンパッソ税理士法人ではご提案させて頂いておりますので、お気軽にご相談して頂ければと存じます。

渋谷事務所 戸田盛通

 

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