
平成23年度税制改正大綱
12月16日に「平成23年度税制改正大綱」が閣議決定され公表されました。今回の税制大綱の注目すべき点は、雇用拡大を目的とした
法人税の実効税率の5%引き下げなど企業減税をはかる一方で、給与所得控除の制限や成年扶養控除の見直しにより、とくに高額所得
者に対する個人課税が増額となっている点です。このほか、相続税の基礎控除の引き下げなども含まれています。以下、税制大綱のうち、注
目すべき部分について抜き出してみました。
1.法人課税
(1)法人税制
①法人税の税率引き下げ(平成23年4月1日以降開始事業年度)
イ 普通法人 現 行:30% 改正案:25.5%
ロ 中小法人 現 行:22%(18%) 改正案:19%(15%) ※年800万円以下の部分
②欠損金の繰越控除制度等の見直し
イ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度のその繰越
控除前の所得の金額の80/100相当額とする。中小法人等については、現行の控除限度額を維持する。
ロ 欠損金の繰越期間を9年に延長する。法人税の欠損金額に係る更正の期間制限を9年とする。
③貸倒引当金制度の適用制限
適用法人を銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定。
2.個人所得課税
(1)給与所得控除の見直し
①給与所得控除の上限設定
その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合 給与所得控除の上限:245万円
②役員給与等に係る給与所得控除の見直し
その年中の給与等のうち、給与等の支払者の役員等が、当該給与等の支払者から役員等の職務に対する対価として支払を受けるもの
(以下「役員給与等」)の収入金額が2,000万円を超える場合の当該役員給与等に係る給与所得控除額については、以下に掲げる場合の
区分に応じて定める金額。
イ 役員給与等の収入金額が2,000万円を超え2,500万円以下の場合 245万円―(役員給与等の収入金額―2,000万円)×12%
ロ 役員給与等の収入金額が2,500万円を超え3,500万円以下の場合 185万円
ハ 役員給与等の収入金額が3,500万円を超え4,000万円以下の場合 185万円―(役員給与等の収入金額―3,500万円)×12%
ニ 役員給与等の収入金額が4,000万円を超える場合 125万円
※ 役員の定義
①法人税法第2条第15号に規定する役員 ②国会議員及び地方議会議員 ③国家公務員(一部) ④地方公務員(一部)
③特定支出控除の見直し
イ 特定支出の範囲の拡大
職務の遂行に直接必要な弁護士・公認会計士・税理士等の資格取得費
職務と関連のある図書の購入費・職場で着用する衣服費・職務に通常必要な交際費及び職業上の団体の経費
ロ 適用判定・計算方法の見直し
その年の特定支出の額の合計額が、以下に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を超える場合は、その超える部分の
金額を給与所得控除額に加算することができる。
その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下の場合 その年中の給与所得控除額の1/2
その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合 125万円
(2)退職所得課税の見直し
その年中の退職手当等のうち、退職手当等の支払者の役員等(役員等としての勤続年数が5年以下の者に限る。)が当該退職手当
等の支払者から役員等の勤続年数に対応するものとして支払を受けるもの(以下「役員退職手当等」)に係る退職所得の課税方法について、
退職所得控除額を控除した残額の1/2とする措置を廃止。
(3)成年扶養控除の見直し
①成年扶養控除の対象の見直し
居住者が以下に掲げる成年扶養親族(扶養親族のうち、年齢23歳以上70歳未満の者)を有する場合には、その居住者のその年分の総所得
金額等からその成年扶養親族1人につき、38万円を控除する。
イ 特定成年扶養親族(年齢65歳以上70歳未満の者・心身障害者等・学生)
ロ 特定成年扶養親族以外の成年扶養親族(その年の合計所得金額が400万円以下である居住者の成年扶養親族に限る。)
(4)金融証券税制
上場株式等の配当及び譲渡所得等に係る10%軽減税率の適用期限を2年延長
3.資産課税
(1)相続税・贈与税の見直し
①相続税の課税ベース及び税率構造の見直し
イ 相続税の基礎控除
現 行:5,000万円+(1,000万円×法定相続人数) 改正案:3,000万円+(600万円×法定相続人数)
ロ 死亡保険金に係る非課税制度
現 行:500万円×法定相続人数
改正案:500万円×法定相続人数(未成年者・障害者又は被相続人と生計を一にしていた者に限る)
ハ 税率
現 行:10%~50%の6段階 改正案:10%~55%の8段階
②贈与税の税率
現 行:10%~50% 改正案:10%~55%
③相続時精算課税制度の適用要件の見直し
イ 受遺者の範囲に、20歳以上である孫を追加 ロ 贈与者の年齢要件を60歳以上に引き下げ
上記のほか、環境税の導入、NPO法人・公益法人等に対する寄附の拡充、租税特別措置法の整備、税務調査の諸手続の明確化なども
盛り込まれています。内容によっては、2011年1月早々に対策を講じなければならない部分もありますので、今後のコンパッソ税理士法人
のHPや新聞報道等にご注目下さい。
参考文献:「平成23年度税制改正大綱(平成22年12月16日)」