
小さな会社の資金調達~少人数私募債について~
中小企業の金融面を支援する目的で施行・延長されていた金融円滑化法が2013年3月末で終了し、金融機関からの融資を取り巻く環境はさらに厳しくなりそうです。そこで今回は、中小企業が直接貸し手から資金を調達する手段である「少人数私募債」についてご紹介します。
<少人数私募債とは>
会社が、少人数私募により発行する社債のことを言います。
法人(株式会社、特例有限会社、合同会社、合名会社、合資会社)なら発行でき、また、貸し手に社債を購入してもらうことで資金を集め、償還期日までの間は利息を支払い、償還期日に一括して元本を返済するというしくみは、一般の社債と同じです。
しかし、一般の社債と違って、官庁への届け出や金融機関への社債管理委託などの必要がなく、発行会社の裁量で縁故者を対象に募集・発行できるという特徴があります。
<少人数私募債の条件>
1.社債購入を勧誘する対象者の数が50人未満であること
最終の社債購入者数ではなく、あくまで声をかける対象者数が49人までとなります。
また、6か月以内に償還期間・利率が同じ社債を発行した場合は、勧誘人数を通算して49人までであることに注意が必要です。
50人以上に勧誘すると「公募」となり、社債管理者(銀行や信託銀行)と社債管理委託契約の締結義務が生じます。また社債発行総額によって「有価証券通知書」、「有価証券届出書」を財務局へ提出しなくてはなりません。
2.社債総額を1口の金額で割った口数が、50口未満であること
例えば社債総額5千万円の場合、1口の金額が100万円だと50口となり要件を満たしませんが、1口200万円とすれば25口となり、要件を満たします(1口の金額は社債の最低購入価格)。
3.少人数私募債に譲渡制限を設けること
社債権者が社債を譲渡するには取締役会の決議を経る必要があること、社債を複数口所有している場合は一括で譲渡しなければならないことを、募集要項に記載しておかなくてはなりません。
<少人数私募債の発行の流れ>
上記の条件を念頭に、「少人数私募債」発行の流れを大まかに見てみると下記の図のようになります。
少人数私募債の発行は、少人数私募債の条件などをきちんと押さえれば、手続きに必要な書類のひな型なども入手可能なのでそれほど難しくはないでしょう。しかし、会社や経営者を信用して社債を購入して下さる人たちに対する責任として、明確な経営理念、事業計画や情報の開示が非常に重要であり、安易な資金調達手段として利用することは避けたほうが良いと思われます。
むしろ、社債権者の信頼に応えるために、よりシビアな経営意識を持ち、モチベーションを高めていける会社・経営者にとっては有為な手段といえそうです。
少人数私募債の発行事例については、全国商工会連合会の事例集に詳しく載っていますので、是非参考にしてみて下さい。
少人数私募債について何かご不明点・ご相談等ございましたら、コンパッソグループまでお問い合わせ下さい。
出典:「少人数私募債の実務とツボがわかる本」二見 達彦著
「ストーリーでわかる少人数私募債」井上 達也・赤田 一著