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地方公会計制度の現況

 地方公会計制度とは、地方財政の「見える化」を推進するものとして総務省が主導する動きで、大づかみに言えば、単式簿記・現金主義会計で動いている官庁会計を、複式簿記・発生主義会計を用いて、より理解しやすくするものとなります。
 官庁会計は、一般の企業会計と異なり、その本質は、
①住民等から徴収した税金等の財源を、
②議会において議決を経た予算を通じ、
③統制のもと配分する、というものです。
これを実現するために、予算の適正かつ確実な執行を理由に現金主義が、予算を表示する方法として単式簿記が採用されています。
 予算執行のためには適しているかもしれない単式簿記・現金主義ですが、一年ごとの状況はともかく、将来入ってくるであろう資金や、返済していかなければならない負債の実態などがわかりづらくなる欠点もあります。夕張市の破綻などを思い出される方もおいででしょう。こうした状況に対して、複式簿記・発生主義を導入することで、より地方公共団体の実情を把握できるようにしようというのが、地方公会計制度の取り組みです。
 会計事務所でも、地方公共団体(自治体及び一部事務組合)への支援を行ってきており、様々な問題に直面しております。例えば、地方公共団体においても退職金は発生します。そのための準備として退職手当組合等の団体が存在し、各地方公共団体がそれに出資しているのが現状です。発生主義会計であれば、退職金を支払う要因、つまり職員が勤務をするのに応じて、将来の支払額を把握するのが通常です。しかしながら、官庁会計は現金主義であるため、退職された方への支払い額と、退職手当組合への出資額しか把握しておりません。その時点で勤務している職員が、いまこの時に全員辞めてしまったなら、いくら支払わなければならないかというのが、官庁会計では数字として出てこないのです。さらに重大なのは、退職金の支払い額と退職手当組合への出資額の差し引きだけを計算して、自分たちの団体には余裕があると錯覚してしまう可能性があることです。
 こうした問題を一つ一つ解きほぐし、地方公共団体の実態を把握し、数字として可視化していかなければなりません。そうして作られた財務書類は、平成29年度には公表が始まっております(一部の猶予された団体を除く)。

 皆様も、お住いの市町村や周辺団体の報告を確認してみてはいかがでしょうか。

 

出典:2015年19月16日高市議員提出資料(総務省HP「地方公会計の整備」)

渋谷事務所 津田純一

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