国際税務について

グローバル化の流れに伴い、国境を越えた取引も活発になってきています。国際取引の活発化は何も大企業に限った話ではありません。私たちが日頃関与している中小企業においても、今後国際取引は増加していくことが予想されます。したがって、国際取引に係る税務についても意識しておく必要があります。そこで今回は一つの事例を基に国際間取引の課税関係(日本側)について検討してみたいと思います。

 
(事例)アメリカ法人A社の100%子会社である日本法人B社が、アメリカ法人A社に配当を支払った場合の日本法人B社の課税上の取り扱いについて

(回答)B社が配当を支払う際に、原則として源泉税を徴収する必要があるが、一定の要件を満たした場合には、源泉税の軽減又は免除の適用を受けることが出来る。

事例に対する回答は上記のようになりますが、法律の適用関係の流れについてもう少し詳しく検討してみます。

日本国憲法98条2項は、次のように規定しています。
「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」

これは条約が国内法より優先していることを意味していると一般的に解釈されています。例えば、米軍等が日本国内において犯罪をした場合、それが公務中の犯罪であれば、第一次裁判権は日本側にはありません(日米地位協定17条)。
ここで、先ほどの事例の法律関係について整理してみます。

1.国内法の検討
非居住者に対し国内源泉所得(所161条各号、配当の場合は9号)を支払う場合には、国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際に所得税を徴収しなければなりません(所212条1項)。

2.日米租税条約の検討
日米租税条約10条においては、日米間の配当についての取り扱いが定められています。それによりますと、一定の要件を満たせば、配当を支払う際の源泉税が軽減又は免除の適用を受けることが出来ます(同10条、22条)。

3.課税関係の決定
上記1.及び2.を踏まえ、課税関係を整理すると次のようになります。日本法人B社がアメリカ法人A社に配当を支払う場合、原則は源泉税を徴収しなければならないが、一定の要件を満たし、租税条約の適用を受ける場合には、源泉税の軽減又は免除の適用を受けることが出来るということになります(日米租税条約が国内法の所得税法に優先します)。
なお、租税条約は、各国毎にその内容は異なりますし、そもそも日本と租税条約を結んでいない場合には、租税条約の適用を受けることは出来ませんので(この場合には、原則通り源泉税の徴収が必要になります)、注意が必要です。

グローバル化の流れにより、今後中小企業においても国際間の取引が増えてくると思います。もし、国際間の取引が発生した場合には、まず、国内法で原則的な課税関係を検討し、その上で、租税条約でどのように課税関係が修正・変更されるのかを検討する必要があります。その点を頭の片隅にでも置いて頂けると幸いです。

出典:財務省HP
    国税庁HP
    有斐閣「よくわかる国際税務入門 第3版」三木 義一 、前田 謙二著

川崎事務所 大城正巳