国外財産Q&Aその2 ~国外財産調書制度の導入の背景~

国外財産にまつわる内容について、シリーズでQ&A形式でご紹介いたします。
2回目の今回は「国外財産調書制度の導入の背景」です。

Q:「国外財産調書制度」が導入された背景について教えてください。

A:「国外財産調書制度」の導入の背景には、国外財産に係る所得税や相続税の申告漏れの著しい増加があります。特に相続税のグローバル化は
  確実に進んでいるといえます。それと同時に海外を利用した脱税や違法な事例も多くあり、当局に指摘され摘発されていることです。

【解説】
国税庁の「平成23事務年度における所得税調査等の状況」によりますと、海外取引を行っている者に対する実地調査の件数は4,019件(前事務年度は3,727件)となっています。申告漏れ所得金額の総額は593億円(前事務年度575億円)に上り、1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,476万円(前事務年度1,543万円)となっております。
同じく、国税庁の「平成23事務年度における相続税調査等の状況」によりますと、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は111件(前事務年度116件)となっています。

海外資産に係る申告漏れ課税価格は72億円(前事務年度59億円)となっております。納税者の資産運用の国際化に対応し、相続税に関して国際的な課税漏れが多くなっています。なかには、外国株式の配当所得10億円を所得から除外していたケースや国外預金30億円を相続財産から除外していたという極端なケースもあったといいます。また、国税査察の調査においても国際的な脱税が出ています。

(脱税の手段)
国際事案では、売上を英領バージン諸島に設立した法人の取引に仮装して、同法人名義の海外の預金口座に振り込ませて除外していたものや、中国の取引先に対して水増しした経費を送金し、水増し分をバックさせて国外預金にして留保していたものがありました。

(不正資金の留保状況及び隠匿場所)
脱税によって得た不正資金については、現金、マレーシア、シンガポールの預金口座、アメリカの投資証券、韓国の投資信託、ハワイの不動産などで留保されていた事例や、海外のカジノで遊興し費消していた事例があります。

このような状況下の下、国外財産の保有者が増加傾向にあるなかで国外財産に係る課税の適正化が喫緊の課題とされ、直近の平成22年度・23年度税制改正大綱においても、国外財産に係る情報の把握について具体的な方策の検討の必要性が示されてきたところでした。
国外に所在する財産から生じる所得につきましては、以前から国外送金等調書の提出制度をはじめ、税務調査その他において収集した情報や外国税務当局との情報交換により得た情報に基づき、適正な課税の確保に税務当局は努めてきましたが、下記の理由により、その把握体制には限界があるところでした。
  1.日本の税務当局が外国金融機関等に調査権限を行使することや資料情報の提出を求めることは執行管轄権の制約から困難です。
  2.租税条約に基づく情報交換により、網羅的に納税者情報を外国税務当局に求めることは困難です。

今回の国外財産調書制度の創設は、こうした点を踏まえ適切な課税・徴収の確保の観点から、国外財産に係る情報の的確な把握への対応として、諸外国の例も参考にして納税者本人から国外財産の保有につて申告を求める制度として創設されたものです。

国外財産のことでご不明なことについては、コンパッソ税理士法人までお気軽にお問い合わせ下さい。

税理士 吉見和典

 

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