公益法人の財務3基準  遊休財産の保有制限とその対策

以前、公益法人に課される財務3基準のうち、収支相償規制の対応策についてご紹介しました。収支相償規制は会計年度毎の剰余金の抑制規制であり、累積した剰余金の抑制は遊休財産の保有制限で規制されます。両制度は、いずれも剰余金の抑制を目的としており、密接に関連しているため、その対応策も共通するものが多く、両制度の不適合が同時に生じた場合は一元的な対応を立案することが可能です。
今回は収支相償規制とも関連する遊休財産の保有制限について、その内容と対応策を両制度の関係も含めて解説します。

遊休財産の保有制限とは
遊休財産の保有制限とは、公益法人の各事業年度の末日における遊休財産が、その年度の公益実施費用額を超えてはならないという制限です(認定法16条)。当該制限は認定基準の1つであり(認定法5条9項、ガイドラインI-8)、認定後もこの基準に適合しなければ公益認定が取り消される可能性があります(認定法29条2項一号)。

遊休財産の算定方法
遊休財産は次のように算定します(認定規則22条2項)。

遊休財産=資産-(負債+基金)-(控除対象財産-対応負債)

上記算式中の控除対象財産は以下の6つです(認定規則22条3項)。
    1.公益目的保有財産
    2.公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務又は活動の用に供する財産
    3.前二号に掲げる特定の財産の取得又は改良に充てるために保有する資金
    4.特定費用準備資金
    5.寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産であって、当該財産を交付した者の定めた使途に従って使用し、若しくは保有して
      いるもの

    6.寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産であって、当該財産を交付した者の定めた使途に充てるために保有している資金

控除対象財産から対応負債が控除されるのは、借入金等によって取得した資産の場合に、負債が二重で控除されないようにするためです。対応負債は、控除対象財産に個別に対応する負債とその他の負債のうち控除対象財産に按分した負債の合計額で計算しますが、簡便的に控除対象財産に個別に対応する負債を特定せず、按分計算のみで算出することもできます(認定規則22条7項8項、FAQ V-4-6)。

遊休財産が保有制限超過となる要因
遊休財産の保有制限の超過要因には以下が挙げられます。
1.剰余金の累積
公益目的事業では収支相償規制に適合していれば過大な剰余金が生じることはないため、収益事業や法人会計において生じた過大な剰余金が累積して生じることが考えられます。

2.公益目的事業の縮小
災害等の臨時的な理由により公益目的事業が縮小や中止となり、公益実施費用額が減少する場合、公益実施費用額は遊休財産の保有上限の基礎となるため、制限超過の要因となりえます。

3.特定費用準備資金や資産取得資金の目的外の取崩
特定費用準備資金や資産取得資金を目的に従い取崩せば、その費用や資産の取得代金が生じますが、目的外に取崩すと流動資産等が増加し保有制限の超過に繋がります。

保有制限超過の対策
遊休財産の保有制限が超過する場合の対策は、1.使途を特定した固定資産を増加させる方法と、2.適正な負債を追加計上する方法に分けられます。

1.使途を特定した固定資産を増加させる
控除対象財産である使途を特定した固定資産を増やすことにより、遊休財産を増やす方法であり、次の4つが挙げられます。
(1)特定費用準備資金の積立て
特定費用準備資金を積立てる際の規程の創設や情報開示については収支相償規制の対応策についての中で記載しました。収支相償規制の対策の時と違うのは、公益目的事業だけでなく、収益事業のための特定費用準備資金でも控除対象財産と認められ、保有制限の対策となります。
留意点は、特定費用準備資金の積立額は費用となり、公益目的事業に係るものは遊休財産の保有上限額を増加させる共に控除対象財産も増加させる2重の効果があるため、これを考慮して積立てる必要があります。

(2)資産取得資金の積立て
資産取得資金を積立てる際の規程の創設や情報開示については収支相償規制の対応策についての中で記載しました。収支相償規制の対策の時と違うのは、公益目的事業だけでなく、収益事業のための資産取得資金でも控除対象財産と認められ、保有制限の対策となります。

(3)公益目的保有財産又は収益事業供用財産の取得
公益目的事業だけでなく、収益事業供用財産、管理業務用財産でも控除対象財産として認められます(認定規則22条3項2号)。
留意点は以下の3つです。
    ●購入した財産が公益目的保有財産であり、利息や配当等の収益を生む場合は公益目的事業に帰属します。
    ●購入する財産は公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務又は活動の用に供する財産であり、公益目的事業に貢献しない事業の
      財産を取得しても控除対象財産とはなりません。
    ●いずれの場合も、その果実を継続的に収益事業等や法人管理の財源に充てることを目的として保有すべきものであると考えられるため、原則として
      取崩すことはできません(内閣府 FAQ V-4-8、V-4-9)。

(4)指定正味財産として受け入れる寄付金の創設
使途の指定されていない寄付金は一般正味財産増減の部の収益となりますが、寄付金の使途の新設や募集規程の変更により特定事業に充当する旨の定めを作れば、寄付金の受領額は指定正味財産を財源とする特定資産となり、控除対象財産に該当します。ただし、過去に受領した寄付金の使途を遡及して変更することは困難です。

2.適正な負債の追加計上
(1)退職給付引当金
平成16年基準以降の公益法人会計基準では、退職給付会計の適用が義務付けられていますが、事実上の退職金を支払っていても退職金規程が無ければ引当金を計上することができません。そのため、退職金規程を整備し退職給付引当金を計上することにより遊休財産を減らすことができます。

(2)消費税等の未払計上
法人税法上、消費税等は未払計上をした年度でも納付した年度でも損金として認められますが、公益目的事業に消費税上の課税売上に該当する取引がある場合は未払計上をすることにより遊休財産を縮小することができます。

収支相償規制対策と遊休財産の保有制限対策の関係
両制度の対策の関係をまとめると次表となります。

以上となります。上記についてご不明な点がございましたらコンパッソ税理士法人までお気軽にご相談ください。

出典:TKC全国会公益法人経営研究会 財務3基準未達対応レジュメ・テキスト

渋谷事務所 宮内剛

 

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