債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い

<企業会計基準委員会(実務対応報告26号)平成20年12月5日「債券の保有目的区分の変更に関する
当面の取扱い」について>

1.概要

 債権の保有目的区分は、原則として取得目的に応じ取得時に判断し、取得後に保有目的区分の変更は、利益調整を排除する観点から

認められず、保有目的区分の変更が認められる場合を限定している。しかし、世界的な金融市場における混乱を背景に、国際会計基準

審議会が「金融資産の保有目的区分の変更」を公表したことに伴い、実務対応報告において当面必要とされる取扱いが示された。

2.会計処理と税務処理の違い

(1)売買目的有価証券から満期保有目的の債券へ変更

①会計処理

・現在の金融不況のように、債券を公正な価額で売却することが困難な期間が相当程度生じている「稀な場合」であること。

・企業が時価の変動により利益の獲得を目的にしないこと。

・満期保有目的債券の定義及び要件を満たしたうえで該当する債券の保有目的区分を変更すること。

・保有目的区分の変更に関しては、追加情報として注記を行なうこと。

上記の要件を満たせば、売買目的有価証券から満期保有目的の区分に変更できる。変更時に生じる帳簿価額と変更時の時価との

評価差額は当期の損益に計上する。

②税務処理

・企業支配株式に該当するようになったこと、又は短期売買業務の全部を廃止した場合(廃止した事実の解釈については、法人税基本

通達2-1-23の2)には、会計処理と同様に売買目的有価証券の時価を基準に譲渡損益が計上される。

 企業会計と法人税の処理は同じとなり、申告調整は不要である。しかし、短期売買業務の全部の廃止がなければ、保有区分の変更は

出来ず、税務上は「売買目的有価証券」であり、期末評価に時価法が適用され評価損益は益金又は損金に算入される。

(2)その他有価証券から満期保有目的の債券へ変更

①会計処理

 最近の金融市場における混乱及び国際会計基準の取扱いを考慮して、以下のすべてを満たす場合には、金融商品実務指針の定めにかか

わらず、その他有価証券から満期保有目的の債券へ変更ができる。

・想定し得なかった市場環境の著しい変化によって流動性が極端に低下したことなどから、保有する債券を公正な評価額である時価で

売却することが困難な期間が相当程度生じているような「稀な場合」であること。

・満期保有目的の債券の定義及び要件を満たしたうえで保有目的区分を変更すること。

・保有目的区分の変更に関しては、追加情報として注記を行なうこと。

 変更時の時価をもって振替えるが、変更時に生じる帳簿価額と変更時の時価との評価差額は、その他有価証券に係る評価差額として
 純資産の部に計上し、満期までの期間にわたり償却原価法の処理に準じて損益に振替える。

 なお、純資産の部に計上されたその他有価証券に係る評価差額については、通常の場合と同様に税効果会計を適用する。

②税務処理

 その他有価証券から満期保有目的等有価証券への区分変更の事実は「株式等保有割合が20%以上」に該当することになった場合に

限られている。なお、株式等とは株式や出資割合であり、債券は含まないため企業会計の「稀な場合」が発生しても区分変更は認め

られない。

 そのため企業会計で区分変更を行なって、「その他有価証券」を時価評価し、評価差額を計上しても、法人税ではその区分変更は認め

られず、依然として「その他有価証券」のままである。そのため会計処理と税務処理では期末の帳簿価額に差異が生じる。

 該当する債券が償還債券(償還期限と償還金額の定めがあるもの)の場合は法人税でも償却原価法が適用され、償還債券の帳簿価額と

償還金額との調整差額を償還期間における各事業年度に均等に割振り、当期の益金または損金に算入する。企業会計の償却原価法と同じ

である。

・その他有価証券を期末時に償却原価法で処理する際に生じる差額は会計上も税務上も一致する。

・期末帳簿価額については差異が生じるため、申告調整を要する。

(3)実務対応報告は当面の取扱いとして認められた会計処理であることからして、本実務対応報告公表日から平成22年3月31日までの

適用とされている。

渋谷事務所 石田 良明

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