
中小企業の会計に関する基本要領3
前2回において、中小企業の会計に関する基本要領の概要及び「中小指針」との相違点について説明を致しました。
今回は、「中小会計要領」が示している代表的な項目についてご説明致します。
<貸倒損失・貸倒引当金>
1.破産手続き等により債権が法的に消滅したときは、その金額を貸倒損失として計上する。
2.債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能な債権については、その回収不能額を貸倒損失として計上する。
3.債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能のおそれのある債権については、その回収不能見込額を貸倒引当金として計上する。
※なお、貸倒引当金の計算方法として、法人税法上の中小法人に認められている法定繰入率で算定する方法も使用できます。
<有価証券>
1.有価証券は、原則として、取得原価で計上する。
2.売買目的の有価証券を保有する場合は、時価で計上する。
3.有価証券の評価方法は、総平均法、移動平均法等による。
4.時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
※時価の把握が難しい非上場株式については、大幅な債務超過等でほとんど価値がないと判断できるものは、評価損の計上が必要と考えられます。
<棚卸資産>
1.棚卸資産は、原則として、取得原価で計上する。
2.棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法による。
3.棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等による。
4.時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
<注記>
1.会社計算規則に基づき、重要な会計方針に係る事項、株主資本等変動計算書に関する事項等を注記する。
2.本要領に拠って計算書類を作成した場合には、「その旨」に記載する。
※(2)の記載は、利害関係者にとってどのような会計ルールを適用しているか重要な情報となります。
以上、代表的な項目についてご説明致しました。このように中小会計要領を活用することにより、決算書の信頼性が増すだけでなく、自社の課題や問題点が把握でき、金融機関や取引先との信頼関係も向上します。
今後、自社の財務経営力の強化を図るためにも中小会計要領の主旨を理解し、適用してみてはいかがでしょうか。
出典:中小企業庁HP 中小企業の会計に関する基本要領、
「Q&A中小企業の新しい会計ルール」(株)TKC出版