
中小企業の会計に関する基本要領1
平成24年2月に、中小企業の新しい会計ルールである「中小企業の会計に関する基本要領」が中小企業庁・金融庁から公表されました。どのような目的で公表されたのか、また、この新しい会計ルールのポイントなどを、3回にわたりお伝えしていきます。
<「中小企業の会計に関する基本要領」作成の目的>
1.経営者自身が自社の経営状況を把握しやすくするため
2.中小企業の利害関係者である金融機関・取引先・株主等への情報提供に資するため
3.中小企業の実務に配慮するため
4.会計ルール適用に関わる事務負担を軽減し実行可能性を高めるため
日本を取り巻く厳しい内外環境の下、中小企業はさらに厳しい状況に置かれています。
そのため、中小企業政策の議論においては、企業自らが勝ち残る力を備える必要があるとされ、財務経営力を強化することが重要なポイントとして取り上げられています。
これまでも中小企業の会計ルールとして「中小企業の会計に関する指針」(「中小指針」)がありましたが、国際会計基準(IFRS)の毎年の改正の影響を受け、多くの中小企業にとって手の届かない存在になってしまいました。
そこで、中小企業団体が中心となり、中小企業の実態を見据え、経営者にとって役立つ会計を確認しようという動きが強まり、この新しい会計ルールが公表される運びとなりました。
<「中小企業の会計に関する基本要領」の概要>
1.趣旨と対象企業
「中小企業の会計に関する基本要領」(「中小会計要領」)は中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため、会社法上の計算書類等を作成する際に、参照にするための会計処理や注記等を示すものです。
「中小会計要領」は法令等ではありませんが、中小企業の実務における会計慣行を考慮して作成されており、会社法第431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の一つに該当します。よって会社法に適合したルールといえます。
対象企業は、計算書類等の開示先や経理体制等の観点から「中小指針」によることを求めることが必ずしも適当でない中小企業とし、実態に即した会計処理のあり方をまとめています。
2.重要な基本ルール
「中小会計要領」は「国際会計基準の影響を受けないもの」と決められています。改定は「必要と判断される場合」に限られています。また、「中小会計要領」の利用にあたっては、適切な記帳が前提であり、「経営者が自社の経営状況を適切に把握するために記帳が重要である。記帳は全ての取引につき、正規の簿記の原則に従って行い、適時に整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成しなければならない」と記帳の重要性を強調しています。
適時・正確な記帳は、経営者への自己報告機能を発揮し、健全な経営を遂行する機能を有し、帳簿の証拠力(信頼性)を高めることとなります。
以上、簡単な概要になります。
上記で述べましたとおり、中小企業の財務経営力の強化が必要とされる昨今、経営者自身が自社の経営実態を正確に把握することが大切になってまいります。そのため、この新ルールの理解を深めることが重要です。
次回以降で、この「中小企業の会計に関する基本要領」のポイントをご案内いたします。
出典:「中小企業の会計 34問34答」中小企業庁、
中小企業の会計に関する検討会「中小企業の会計に関する基本要領」中小企業庁・金融庁、
「Q&A中小企業の新しい会計ルール」(株)TKC出版