
中古建物のリノベーションと残存耐用年数
最近、TVの情報番組や雑誌で話題となっている「リノベーションマンション」。不動産業界で「リノベーション」とは、「既存の設備を修繕・取替えるだけでなく、新しい機能を追加して、自分好みの部屋にする。」という意味で使われることが多いようです。
リノベーションマンションを選択する人は、
(1)新築物件を購入するより、購入資金+リノベーション費用の方が安くなる。
(2)新築物件に比べて、購入後の資産価値の低下が少ない。
といった部分に魅力を感じているようです。物件によって条件は様々なので、全てのリノベーションマンションが(1)(2)に当てはまるとは限りませんが、検討してみる価値はありそうです。
一般の住宅だけでなく、会社が建物を購入する場合も、中古物件を購入して、大規模修繕・改良をする場合があります。この場合、中古建物の残存耐用年数を簡便法で見積もることができるでしょうか。今回は、中古木造建物を購入し、改良等を行ったのち、店舗として使った場合を例にご説明します。
(購入物件) 建築後15年経過した木造建物(法定耐用年数22年)
(購入価額) 1,000万円
(改良費用) 900万円(全額資本的支出)
(再取得価額)3,000万円(この建物を新品として取得する場合の価額)
まず、改良費用900万円は、中古建物を購入し、店舗として事業の用に供するために支出した費用なので、建物の取得価額に算入されます。次に、この中古建物(資本的支出を含む)の減価償却費を計算するにあたって、簡便法によって見積もった残存耐用年数によることができるでしょうか。
残念ながら、今回のように、改良費用(資本的支出の金額)が中古建物の取得価額の50%を超えている場合には、その改良等を行ったことが中古建物の使用可能期間を伸長させたと考えられます。そのため、残存耐用年数を見積もるにあたって、簡便法によることができません(耐令3(1))。しかし、支出した改良費用(資本的支出の金額)が再取得価額の50%を超えない場合には、次の算式によって計算することができます。
A:中古資産の取得価格(資本的支出を含む) 1,900万円
B:中古建物の購入価格(資本的支出を含まない) 1,000万円
C:中古建物について簡便法により算定した残存耐用年数 (22年-15年)+15年×0.2=10年
D:改良費用(資本的支出) 900万円
E:中古建物に係る法定耐用年数 22年
A÷(B÷C+D÷E)=1,900万円÷(1,000万円÷10年+900万円÷22年)=13.48年
1年未満の端数を切り捨て、13年(耐通1-5-6)。
ただし、支出した改良費用(資本的支出の金額)が再取得価額の50%を超えている場合は、法定耐用年数を適用することになります(耐通1-5-2)。
以上となります。上記についてご不明点やご相談等ございましたら、コンパッソ税理士法人までお気軽にお問合せ下さい。