デリバティブ取引

 リーマン・ショック等の影響で減少したものの、デリバティブ取引の残高は増加傾向にあります。
 「デリバティブ取引は投機」といったイメージもあり一般企業における浸透度は高いとはいえません。しかしながら、大企業はもちろん
中小企業においても適切にヘッジ取引を行うことで、安定的な経営を実現したいといったニーズは存在しています。
 平成12年度より適用された金融商品会計基準により、デリバティブ商品には時価会計やヘッジ会計が導入されましたが、今回は
その概要をご紹介します。

1.デリバティブ取引

 デリバティブ(金融派生商品)とは、債券、株式、為替などの現物金融商品のリスクをコントロールするために、現物金融商品を基本
として派生していった金融商品のことで、具体的に以下のような取引が該当します。

 (1)先物取引 (2)先渡取引 (3)オプション取引 (4)スワップ取引

2.ヘッジ会計

 デリバティブ取引の多くはヘッジ手段として利用され、ヘッジ対象とヘッジ手段として利用されるデリバティブ取引について損益認識
時点のずれを補正
しようとする会計手法です。

 (注)ヘッジの対象となるリスクにさらされている現物資産・負債のことをヘッジ対象といい、ヘッジの際に用いるデリバティブ取引を
   ヘッジ手段といいます。

3.ヘッジ会計の方法

 以下の二つの方法があります。

(1)繰延ヘッジ
 ヘッジ対象とヘッジ手段の損益認識時点のずれをヘッジ手段から発生する損益を繰り延べることで解決しようとする方法

(2)時価ヘッジ
 時価評価されているヘッジ手段の会計処理を変更せず、原価評価されているヘッジ対象を時価評価し、評価差額を損益に計上する
 ことで、損益認識時点のずれを解決しようとする方法

4.ヘッジ会計の要件

 ヘッジ取引にヘッジ会計が適用される場合、ヘッジ取引時には次の要件が要請されます。

(1)当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること

(2)企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引が これに従って処理されることが期待されること

5.税務上の取扱い

 会計上デリバティブ取引が時価評価されることとなったことに伴い法人税法においても、事業年度終了の日に未決済となっている
デリバティブ取引を、決済されたものとみなして算出した利益又は損失を、益金又は損金の額に算入します。またヘッジ会計を
適用している場合には、繰延ヘッジ・時価ヘッジ共に、会計と税務で取扱いに大きな相違はありません
 従って適正な会計処理を行っていれば、基本的にはデリバティブ取引に対する申告調整の必要はありません

6.中小企業におけるヘッジ会計の検討

 1~5において簡単な概略のみご紹介しましたが、ヘッジ取引が一定レベルのリスク管理、管理部門などを設けて月次決算を行う
等の仕組みを構築している必要性がある以上、中小企業においては、有効的なリスクヘッジ効果を得ることは困難な部分もあります。
 
 しかし、大企業と比較して経営資源が相対的に乏しい中小企業の場合において、価格、金利、為替のリスクは一層深刻であるとも考え
られます。安定的な経営の手段としてヘッジ取引を検討する余地はあるかもしれません。

参考文献 「商品先物取引の会計処理及びヘッジ会計の適用方法」(編集・発行 東京穀物商品取引所 監修 朝日監査法人)
       「ヘッジ取引に係る会計・税務のあり方に関する提言」(ヘッジ取引普及検討会)

川崎事務所 小澤 孝史

 

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