
スキャナ保存制度
平成27年税制改正でスキャナ保存制度の範囲が拡大されました。制度の概要は次のとおりです。
<対象書類の見直し>
スキャナ保存の対象となる契約書及び領収書に係る金額基準(現行:3万円未満)が廃止されます。
この際、重要書類(契約書・領収書等)については、適正な事務処理の実施を担保する規程の整備と、これに基づき事務処理を実施していること(適正事務処理要件を満たしていること)をスキャナ保存に係る承認の要件となります。
(注)上記の「適正事務処理要件」とは、内部統制を担保するために、相互けん制、定期的なチェック及び再発防止策を社内規程等において整備するとともに、これに基づいて事務処理を実施していることをいいます。
<業務処理後に保存を行う場合の要件の見直し>
重要書類について、業務処理後にスキャナ保存を行う場合に必要とされている関係帳簿の電子保存の承認要件が廃止されます。
<電子署名要件の見直し>
スキャナで読み取る際に必要とされている入力者等の電子署名を不要とし、タイムスタンプを付すこととするとともに、入力者等に関する情報の保存を要件とすることになります。
<大きさ情報・カラー保存要件の見直し>
重要書類以外の書類について、スキャナで読み取る際に必要とされているその書類の大きさに関する情報の保存を不要とするとともに、カラーでの保存を不要とし、グレースケール(いわゆる「白黒」)での保存でも要件を満たすことなります。
改正後の制度は平成27年9月30日以後の承認申請から適用されますが、スキャナ保存をする3月前までに申請が必要となるため、最短で平成28年1月1日からスキャナ保存が可能になります。
この改正により、3万円以上の領収書等が対象に含まれることと、一般書類については白黒保存が可能、電子署名が不要など要件緩和されました。また、スキャナ保存で原本破棄も可能になり、文書の管理コスト削減が実現し、ペーパーレス化への対応となり、今後の利用者増加が見込まれます。しかし、読取装置が原稿台と一体のスキャナとされており、ハンディスキャナ、デジタルカメラ、スマートフォンは不可です。広く普及するには検討が求められます。
経団連では、国内企業が税務書類を保存するコストは年間約3000億円となると試算しています。また、電子保存による効果として、検索性と参照性の向上をあげており、時間短縮による生産性の向上により、経済界全体でさらに2700億円の効果があがることを試算しています。クラウド化することで、東日本大震災のような不測の事態にも備えることができます。
米国では税務書類を電子保存することは広く行われていると聞きます。最近では、経理の清算システムにスマホを利用したものも出てきています。コスト削減効果など、大きな経済効果があがることを考えれば、さらに使い勝手の良いスキャナ保存制度の検討を是非お願いしたいところです。
出典:財務省HP