
スキャナ保存制度の改正
「日に日に高くなる納品書や領収書の山…。後になって探し当てるのも一苦労だ。スキャナで読み取って、デジタルデータとして保存できたら楽なのに…」という要望に応える制度がスキャナ保存制度です。当ブログでも、2012年と2015年に取り上げました。
今年度の税制改正で、スマートフォンやデジタルカメラでの撮影が解禁され、小規模企業向けの特例も設けられました。クラウドサービスの発展によってシステム投資のハードルもずいぶん下がりましたので、スキャナ保存制度が急速に広まると予想されます。2017年1月から適用される改正の概要をお伝えします。
<スマートフォン・デジタルカメラ保存解禁、相互けん制要件の緩和>
「スキャナは原稿台と一体になったものに限定する」、「領収書の受領とスキャナ読み取りは、それぞれ別の者が行わなければならない」という要件が廃止されます。そこで、
1.領収書を入手した従業員が、自分のスマートフォンで領収書を撮影、会社のサーバ等へ送信
2.電子計算機処理システムによりタイムスタンプを付与
3.経理担当者等が内容確認
4.第三者が事後検査
5.原本廃棄
という業務フローが可能になります。
<税理士の定期的な検査により社内でのチェックが不要に>
経理担当者等による内容確認は、領収書の受領者本人が読み取りを行うことによる改ざんや不正を防止するための社内チェックです。小規模企業者では、顧問税理士が事後検査を行えば、経理担当者等による内容確認を省略できます。スマートフォンなどで領収書を撮影してデータを送信し、領収書本体を顧問税理士に送れば完了となるのです。
※小規模企業者とは、常時使用する従業員の数が20人(商業またはサービス業に属する事業を主たる事業として営む者について5人)以下の事業者をいいます。
<準備が必要>
スキャナ保存を開始しようとする日の3ヶ月前までに所轄税務署長等に申請書を提出しなければなりません。スマートフォン保存解禁の当初(2017年1月)から適用を受けたいのであれば、今年の9月30日までに申請書を提出する必要があります。
申請書には、スキャナなどの機器名を記入する欄がありますので、誰のスマートフォンでも可という訳にはいきません。申請書に事務処理規程を添付しなければなりませんので、自社に適した規程を作る必要があります。領収書を受領者がスマートフォンで撮影する場合には、受領後3日以内に撮影とタイムスタンプ付与を行うという入力タイミングの要件もありますので、しっかりした規程の作成と徹底が求められます。
概要は以上となります。これを機に電子保存化を考えたらいかがでしょうか?
出典:ぎょうせい「こうなる!国税スキャナ・スマホ撮影保存」佐久間 裕幸著
週刊税務通信 NO.3417、NO.3419
納税通信 第3434号