
これって、修繕費?固定資産?
固定資産にかかる修繕を、「修理したのだから修繕費」だとか、「金額が高額だから固定資産」だとか、判断基準を曖昧にしてしまうことってよくあると思います。例えば、次のような場合は修繕費なのでしょうか?それとも固定資産なのでしょうか?
Q1.車検に出したが、エンジン丸ごと交換したので、70万円掛かった。
Q2.アパートの外壁塗装工事を行い、300万円支払った。
Q3.機械の部品交換見積もりが100万円だったが、高性能の部品に取替えたため、180万円掛かった。
修繕又は改良等のために支出した費用のうち、固定資産の使用可能期間を延長させたり、価値を高めたりする支出を資本的支出といい、会計上は固定資産として計上します。修繕費になるか資本的支出になるかの判別は、微妙なものが多く税務トラブルが生じやすいところです。
国税庁タックスアンサーでは、以下のように説明されています。
「No.5402修繕費とならないものの判定」
固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、修繕費として支出した時に損金算入が認められます。
ただし、その修理、改良等が固定資産の使用可能期間を延長させ、又は価値を増加させるものである場合は、その延長及び増加させる部分に対応する金額は、修繕費とはならず、資本的支出となります。
修繕費になるかどうかの判定は修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定します。例えば、次のような支出は原則として修繕費にはならず資本的支出となります。
1.建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
2.用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
3.機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
ただし、一つの修理や改良などの金額が20万円未満の場合又はおおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などである場合は、その支出した金額を修繕費とすることができます。
次に、一つの修理、改良などの金額のうちに、修繕費であるか資本的支出であるかが明らかでない金額がある場合には、次の基準によりその区分を行うことができます。
1.その支出した金額が60万円未満のとき又はその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10%相当額以下
であるときは修繕費とすることができます。
2.法人が継続してその支出した金額の30%相当額とその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない
金額を修繕費とし、残額を資本的支出としているときは、その処理が認められます。また、災害により被害を受けた固定資産(被災資産)について
支出した費用については、次により資本的支出と修繕費の区分をします。ただし、評価損を計上した被災資産を除きます。
(1)被災資産につきその原状を回復するために支出した費用は修繕費とします。
(2)被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止などのために支出した費用については、法人が
修繕費とする経理を行っている場合は、その処理が認められます。
(3)被災資産について支出した費用(上記(1)及び(2)の費用は除きます。)の金額のうち、修繕費であるか資本的支出で
あるかが明らかでないものがある場合には、法人がその金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出としているときは、
その処理が認められます。ただし、被災資産の復旧に代えて資産を取得したり、貯水池などの特別の施設を設置したりする場合は、
新たな資産の取得になりますので、修繕費としての処理は認められません。
(法令132、法基通7-8-1~6)
といったように「ただし」や「~の場合は」などの言葉が多く、私の場合、迷子になってしまいます。そこで、下のようなフローチャートを活用すると判別しやすくなります。
(注1)災害等に伴って支出された費用のうち、以下のいずれかに該当するものは、修繕費として処理します。
1.被災資産につきその原状を回復するために支出した費用
2.被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用のうち、その法人が修繕費として
経理したもの
(注2)明らかに資本的支出に該当する支出とは、例えば、以下のものが該当します。
1.建物の避難階段の取り付け等物理的に付加した部分に係る費用の額
2.用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
3.機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取替えた場合において、通常の取換えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注3)通常の維持管理のため又はき損した固定資産につきその現状を回復するために要する支出とは、例えば、以下のものが該当します。
1.建物の移えい又は解体移築をした場合におけるその移えい又は移築に要した費用の額
2.機械装置の移設に要した費用の額
3.地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額 など
(注4)その支出金額の30%相当額が前期末の取得価額の10%に満たないときは、その10%に相当する金額を修繕費とし、残額を資本的支出とします
(災害等に伴って支出された費用でない場合に限ります)。
これらに基づいて、上記Q1~3の答えです。
A1.車検で掛かった費用なので、フローチャート(ウ)の判定により「修繕費」です。
エンジン交換が車検の際でなかったとしても、(オ)又は(カ)の判定により「修繕費」になります。(キ)の60万円の判定の所まで行きません。
A2.アパートの外壁塗装のための支出は新築時の状態に戻すための費用なので、(カ)の判定により「修繕費」となるでしょう。
ただし、塗装の質を従前以上のものに替えるなど、資産価値や耐久性が増すような場合には、(エ)の判定により「資本的支出」となりますので、注意が
必要です。
A3.(エ)の判定の(注2)の3.より、通常の取換え費用を超える額180万円-100万円=80万円が「資本的支出」、100万円が「修繕費」となります。
なかには、このフローチャートにあてはめようとしても、判断に迷うこともあるかと思います。そんなときは、コンパッソ税理士法人までお気軽にお問い合わせ下さい。
出典:国税庁HPタックスアンサー
税務研究会編「税務インデックス」