
あなたのお住まいの自治体は何モデル?
平成19年8月、総務事務次官通知により、『行政改革推進法第62条第2項において、政府が地方公共団体に対し、企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備に関し必要な情報の提供、助言その他の協力を行う』ことが通知されました。
今後地方公共団体が作成する財務諸表は、原則として国の作成基準に準拠し、発生主義の活用および複式簿記の考え方の導入を図ることになります。貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書の四表を標準形として、地方公共団体の単体および関連団体などを含む連結ベースで、『基準モデル』または『総務省方式改訂モデル』を活用して公会計の整備の推進に取り組むことになります。
人口3万人以上の都市は平成20年度決算を、人口3万人未満の都市は平成22年度決算をそれぞれ財務四表作成に必要な情報の開示に取り組むことになっております。また人口3万人以上の都市では、今、平成20年度決算の公表がなされつつあります。
皆様がお住まいの自治体のホームページで《財政》という項目にアクセスをしてみてください。そこで皆様がお住まいの自治体の財政状態について知ることができ、これを機会に地方自治について関心を持っていただければと思います。
1.現時点での作成状況
基準モデル:全体の約1割程度 総務省方式改訂モデル:残り9割
2.両モデルの特徴
(1)基準モデル
・資産の評価は新公会計制度導入当初に全てを公正価値(時価)により評価します。
※今までの自治体では企業会計でいうところの固定資産台帳というものがありませんでした。
・毎年発生する個々の取引についてはその取引に応じて、資産、負債、損益などを把握することになります。
(2)総務省方式改訂モデル
・資産の評価は売却可能な資産についてのみ時価での評価を行い、それ以外の資産については過去の普通建設事業費の積上げ(事業費の累計)により算定します。
※基準モデルとは違い、段階的に資産の評価を行うため、導入当初は全ての資産が網羅されていません。
・既存の決算統計情報の活用を認めています。
3.基準モデルと地方自治体経営
・新公会計制度の導入で予算編成とお金の使い道を徹底解明することができます。
・新公会計制度に基づく情報提供をすることによって地域住民に対する説明責任を果たすことができます。
4.今後の課題
・総務省方式改訂モデルは決算統計という資料を用いての作成が今後できなくなります。そのため改訂モデルの改訂版が存在し、混乱を招く恐れがあります。
・自治体の財政状況を改善するためには資産負債の圧縮が急務となり、資産の流動化などによる資産のオフバランス化の実現を目指すことになります。
・今回の公会計改革では、ただ財務四表を作成するだけではなく、新公会計制度の導入による活用が求められています。目的別行政コスト計算、長期経営計画などの策定により、自治体経営の効率化を目指すことになります。
※参考文献 東峰書房 松村俊英 著 『基準モデル』で変わる公会計
川崎事務所 鈴木伸明