
『中小企業金融円滑化法』と『経営改善計画』
平成21年12月に「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(以下、中小企業金融円滑化法)が施行されました。当初、平成23年3月末日までの時限立法でしたが、期限が1年間延長されるとともに、(1)金融機関の開示・報告資料の大幅な簡素化、(2)金融機関による経営再建計画の策定支援のコンサルティング機能の発揮の促進、といった点の改善が加えられました。
中小企業金融円滑化法の具体的な内容は、資金繰りが苦しくなった中小企業から要請を受けた金融機関が、貸付条件の変更等(リスケ)にできる限り応じるように努めなければならないとする一方で、金融検査マニュアルの改定も行われ、条件変更を行っても債務者区分を下げられることなく、不良債権とされないこととなりました。なお、申請に際しては、申請から一年以内に実現性の高い抜本的な『経営改善計画書』(実抜計画)を作成し提出することが求められています。
では、実際にどれだけの条件変更の申込が行われているかについては、金融庁より発表された「中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件変更等の状況について(施行日から平成22年12月末までの実績)」(平成23年2月25日速報値)より確認することが出来ます。資料によると、申込総数が866,495件、実行率が96.9%。謝絶分を含めても87.6%の実行率となっています。
中小企業金融円滑化法が施行された当初に申請をされた中小企業は、申請からちょうど一年が経過し、『経営改善計画書』の提出期限を迎えるケースが多く発生すると予想されます。また、『経営改善計画書』の提出については、各金融機関によって対応は異なっているようです。とくに政府系金融機関においては、特定の様式を用いているため金融機関担当者とのヒアリングで完了してしまうケースが多いようです。一方、主要行・地域銀行等においては、ある一定のレベルの『経営改善計画書』の提出を求めているため中小企業にとっては負担となっているようです。
一口に『経営改善計画』といっても、単に数字を並べただけでは『実抜計画』ではないため金融機関には受け入れてもらうことは出来ません。最低限、以下の内容を分析し、文章化し、分析に基づいた計画を数値し提出することによって一定レベルの実抜計画を策定することが可能となります。
<『経営改善計画書』の概要>
1.現状分析
(1)外部環境 : 業界の動向・成長産業又は斜陽産業・市場規模
(2)内部環境 : 自社の経営分析(収益性・安全性・成長性等)
(3)SWOT分析 : 自社の強み・弱み・機会・脅威の分析
2.改善内容の確認
(1)事業内容 : 事業の集中・再構築 等
(2)財務内容 : 遊休資産の売却・個人資産の処分による借入金の圧縮 等
(3)収益内容 : 現状の売上でのコスト削減額の確認・必要売上高・粗利の確認
3.具体的な行動計画(アクションプラン)の策定
例:在庫の削減、経費の削減、借入金の見直し、設備投資計画等
4.財務計画の策定
キャッシュフローの確認 : このままではこうなる(改善前と改善後の比較)
5.モニタリング
アクションプランの実施状況・達成状況の金融機関への報告
当法人においても『経営改善計画書』・『経営再建計画』の作成支援、相談を実施しております。作成に際して、何か不明点・不安点などございましたらお気軽に当法人までお問い合わせ下さい。