
「要注意先」として融資を受ける際のポイント
中小企業金融円滑化法が終了した後、金融庁は金融機関に対して新規融資への積極的な取組みを指導しています。2013年9月6日に公表された金融庁の平成25事務年度の監督方針等でも、同様の方針が打ち出されています。その狙いは資金供給を通じたデフレ脱却にあり、最近は、大手金融機関にも融資審査のハードルを下げる傾向が見られます。そのため、今後は、業績や財務内容の悪い企業にも新規融資を受けるチャンスが広がっていくと思われます。そうした企業の融資審査で、現状、特にどのような点がポイントになっているかを解説します。
不良債権に該当するのは要管理先以下の区分であり、その他要注意先は金融機関にとって正常債権の一部です。
しかし、このゾーンは正常債権であると同時に不良債権予備軍でもあります。金融機関が正常債権と考えていても、金融庁検査で不良債権に引き下げられるおそれがあり、新規融資には慎重にならざるおえません。金融庁の平成25事務年度の監督方針・金融モニタリング基本方針では、金融機関全体の健全性の観点から、小口の資産査定について金融機関の判断を極力尊重するとし、中小・零細企業等に対する融資査定の大部分を金融機関に一任する方針が示されました。この措置により、金融機関はその他要注意先への融資に取り組みやすくなり、融資の拡大が期待できるといわれています。
<要注意先への融資が行われる条件>
1.資金使途が「前向き」である
2.債務超過の程度が軽い
3.黒字かつ営業活動キャッシュフローがプラス
4.債務償還年数が10年以内(見通しを含む)
5.金融機関との間で窮境原因が明確化されている
6.売上が底打ちし、増収傾向にある
7.マーケットが伸びている
8.定期的なモニタリングが可能
9.決算書に対する疑問が解決している
10.後継者が決まっている
約条返済をリスケジュールしていると、多くの場合、要管理先に区分されます。しかし、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)」が策定されていれば、その他要注意先にランクアップします。したがって、実抜計画が策定され、それに各金融機関が同意していることが融資の前提条件です。
この実抜計画は、
(1)3年以内の黒字化
(2)5~10年以内の債務超過解消
(3)債務超過解消時の債務償還年数10年以内
という基準を満たしている必要があります。とはいえ、リスケジュールしている状態で借入ができるのは、手形割引や短期のつなぎ資金が中心です。設備資金については、ほとんどの場合、リースを使うか、自社のキャッシュフローで賄うことになるでしょう。したがって、本格的に融資を復活させるためには、メインバンクに借換え資金を融資してもらう等で、リスケジュールの状態から離脱することが必要になります。
出典:企業実務2013.11 安田順の実践「経営改善」塾5