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「犬税」の導入断念

皆さんの中にも、ペットを飼っている方がいらっしゃることと思います。平成22年に環境省が行った「動物愛護に関する世論調査」では、ペットの飼育が【大好き・好きと回答した人が72.5%】、【ペットを飼っている人が34.3%】、ペットを飼っている人の内、その種類は【犬58.6%】【猫30.9%】【魚類19.4%】でした。

ところで、犬のふん放置対策に充てるため、飼い主に法定外税の「犬税(仮称)」を課すことを、検討していた自治体があったことはご存じでしょうか?
大阪府泉佐野市は、狂犬病予防法に基づいて登録された市内の飼い犬約5千匹を対象に、1匹あたり年2千円を徴収し、税収約1千万円を対策費にあてようとしていました。しかし、2~3月のアンケート結果から、市内には未登録の犬を含めて8900匹以上いると推計。一方、徴税のための経費は、初年度約2600万円、次年度以降も年約1600万円かかると試算しました。
有識者らによる市の検討委員会は議論を重ねてきましたが、「狂犬病の登録をしているかどうかで税負担の不公平が生じるうえ、徴税経費の点で市の負担が大きくなる」として、「導入は困難」との報告をまとめ、 2014年7月23日、泉佐野市長は、「市議会や総務省に理解いただくのは難しいと思うので、導入は見送る」と、導入を断念する方針を明らかにしました。(泉佐野市HP)

犬税」は、税目としては「法定外普通税」といって、法律によらずに市町村が総務大臣の許可を受けて設けることができる税のことです。日本の歴史を振り返ると過去には「犬税」が存在しており、昭和30年には、全国約2700の自治体が課税していました。今でこそ珍しい税に見えますが、当時は特に注目される税でもなかったようです。昭和57年、長野県の四賀村を最後にこの税はなくなりました。当時、長野県四賀村では、4月1日現在で生後3ヶ月以上の犬を飼っている場合、1頭につき年300円の税金をかけました。年間で15万円ほどの税収だったようです(国税庁:日本の税の歴史)。

さらに日本の歴史を遡ると、悪法で有名な「生類あわれみの令」があります。5代将軍徳川綱吉綱吉が発したもので、綱吉の干支である犬を飼うことを禁じ、犬をいじめると処罰、もし犬を殺してしまうようなことがあれば死刑となりました。1695年(元禄8年)には、現在の東京中野)などに、野犬を収容するための犬小屋などを数百棟も造り、一番多いときで、約8万匹の犬を飼っていたようです。しかもその飼料は白米・味噌・干鰯など立派なもので、これらの費用は「犬金上納」といって農民から高100石につき1石、町民から間口1間につき金3分という「犬税」で賄われていました。

泉佐野市は「犬税」の導入は見送りましたが、ふんを放置した飼い主への過料(罰金)の強化、具体的には現行条例で定める5千円を1万円に倍増させる構想が浮上しているようです。さらに、過料の徴収にあたる環境巡視員(大阪府警OB)も現行の2人から4人に増やし、ふん放置を現認次第、警告抜きで即刻徴収するなど、次々と強硬姿勢を打ち出しています。

我が家は3頭のチワワが留守番をし、お帰り!と疲れた心を癒してくれます。勿論、お散歩には、外での糞尿対策グッズを持ち歩いています。飼い主として当たり前と思っているのですが、「犬税」導入や罰金強化を考えなくてはならないほど、マナーが悪くなっているのですね。

川崎事務所 長谷川三千代

 

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