「投資家の企業評価にもたらす影響~ファイナンス・リースとオペレーティング・リース~」

リース取引のうち、(1)リース期間の中途解約が実質不可能で、(2)借手がリース物件からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受し、(3)借手がリース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担するものをファイナンス・リース取引という。
この取引では、リース契約は実質、リース物件をローンによって購入し、そのローンの元本と利子を長期的に分割払いするのと同じであるため、会計処理も通常の売買取引に準じて行われる。

 一方、上記以外のリース取引はオペレーティング・リース取引という。この取引では、通常の賃貸借取引と同様に会計処理をおこなう。
このような形態の違いにより、企業の財務諸表は大きく異なる。ファイナンス・リース取引では、貸借対照表の資産にリース資産が計上され、同時に負債にはリース債務が計上され、資産の償却と負債義務の実行が認識される。一方でオペレーティング・リース取引では、賃借費用/現預金だけが認識される。これにより、ファイナンス・リース取引では、オペレーティング・リース取引に比べ、資産負債ともに膨らむこととなる。投資家は企業を評価する際に、ファイナンス・リース取引から生み出される企業の収益は見積もることが出来るが、オペレーティング・リース取引から生み出される企業の収益を見積もることは困難となる。

また、投資家にとって企業の設備投資額は業績判断の指標のひとつであるが、リース取引を設備投資額に含めるとすれば、リース会社における設備投資額、借手側企業の設備投資額双方に集計されることとなり、実際の設備投資額に比べ膨らんだ数値が独り歩きし、マクロ経済上誤った判断を与えるかもしれない。

 我が国におけるリース業界は、リース資産を表示することに反対の立場をとっている。財産の帰属からすれば、リース資産は、あくまでリース会社のものである。しかし、IFRS(国際財務報告基準)では、取引形態の違いによる会計処理の取り扱いの差異が投資家にとって有用でない、との観点から、すべてのリース取引の会計をオンバランス化する方向で作業が進められている。

参考文献  桜井勝彦著 『財務会計講義・第18版』 中央経済社 2010年
      佐藤信彦、角ヶ谷典幸【編者】 『リース会計基準の論理』税務経理協会 2009年
                                   
                               

千葉旭事務所 大木 剛仁