
「会社の備品・少額資産」の購入・管理
今回は、「会社の備品・少額資産の購入・管理」についてご紹介します。
<少額資産管理の重要性>
1.税務・会計における少額資産の取扱い
税務において、固定資産とは「棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち、土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるもの」とされています。これらのうち減価償却資産は、「建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるもの」と定義されています。
税務では固定資産について、取得金額を判断基準とした処理が規定されています。取得金額が少額である場合、費用処理することが認められます。これは、少額資産まで減価償却の管理を求めると、期間損益に与える影響はほとんどないのに事務負担が大きくなるため、そうした措置が取られているのです。一般的に、少額資産の取扱いは、税務の考え方を取り入れた会計処理を行うことが多いようです。
2.定額のものは管理がおざなりになりがち
少額資産とならない通常の固定資産は、一時に費用化できないため、通常、固定資産台帳を作成してきちんと管理されているはずです。固定資産台帳では取得から徐・売却されるまで、保有期間中の資産の減価償却が管理されます。台帳をもとに、現物の資産との棚卸確認を取ることもできます。
一方、少額資産は一時に費用化されることが多いため、税務・会計上は、必ずしも管理が必要とはいえないものです。しかし、少額資産にあたるものでも数年にわたって使用されるものは色々あります。そこであるべき管理をしていかないと、不正購入、不正使用の発生などのマイナスの側面が出てきます。
<各資産の管理方法>
1.IT資産
IT資産は、故障や不足が生じると、業務に大きな影響を及ぼします。計画的・定期的に点検や交換を行ない、故障などの問題を未然に防いだり、問題が起こってもその影響を最小限に抑えるようケアすることが求められます。
(1)パソコン本体・モニタ
●購入
パソコンの法定耐用年数は、サーバ用途のものを除いて4年とされていますが、実際の耐久性や機能の陳腐化も加味して、買替えの計画を立てます。Backblaze社が公表しているHDDの故障発生率では、最初の1年間は5%前後で、その後減少し、3年を過ぎたあたりで急増しています。パソコンの故障には様々な原因が考えられますが、HDDが故障するとデータの完全な復旧が難しいなど特に影響が大きいため、重要度の高い業務で使用しているパソコンについては、3~5年をめどに交換するのが適切と考えらえます。故障が発生しても業務への影響が少なく、それほど高い性能を要求されていないパソコンは、故障するまで使い切ることで経費節減を目指すという考え方もあります。
一方、モニタの耐用年数は、バックライトと呼ばれる部品の寿命にほぼ一致するといわれます。バックライトの寿命は、1万5000~5万時間です。寿命が1万5000時間と考えると、1日7時間、週5日使用すると、8年程度で寿命を迎える計算になります。製品寿命が長いため、パソコンとは別で交換計画を立てるのが適切です。
モニタを選定する際は、VDT症候群対策として、できるだけ目に優しいモデルを選定するという視点も取り入れましょう。なお、急な入用や故障による交換に備え、予備機を用紙しておくと、いざという時に業務への影響が最小限に抑えられます。
●管理
パソコン本体やモニタには管理番号を記したシールを貼ります。その管理番号をもとに、購入日、利用者名、機種名などを記した台帳を作成して管理します。管理台数が多数になる場合は、資産管理ソフトウェアを利用することも考えられます。パソコンを社内LANへ接続することで、常に最新情報を確認することができます。
台帳を利用して、パソコンに過不足や紛失がないか、交換時期が過ぎているものはないかなど、定期点検を確実に行います。また、故障が発生したとき保守サービスを受ける為に必要な情報や、障害復旧に必要な設定情報をすばやく参照できるよう、関連情報をファイルにまとめて所定の場所に保存しておくと役立ちます。
■パソコン管理台帳(例)
(2)周辺機器、低額のOA機器
●購入
小型プリンタ、スキャナ、光学ドライブなどの周辺機器、またその他の低額のOA機器は、故障した時の為に必要数プラスアルファの余裕をもっておくのも良いでしょう。勿論、業務への影響が大きくないのであれば、その都度購入するルールで構いません。プリンタのトナーやインク、OA用紙などのサプライ品については、他の事務用品や消耗品と一緒に在庫管理し、在庫切れを起こさないように数量を確認しつつ発注します。
●管理
機器の故障時に発生する業務への影響度合いを考慮して、備えを検討します。1台の故障が業務に大きく影響を及ぼす場合には、即日対応できるよう、出張メンテナンスサービスのある保守サービスと契約しておく必要があります。
セキュリティ対策として会社指定の暗号化機能付きUSBメモリの使用を義務化し、条件を満たしたUSBメモリを配付するなど、機器の貸出しを行う場合は、台帳を作成し、誰がどの機器を使用しているかを把握します。
(3)ソフトウェア
●購入
ソフトウェアには、様々な購入形態、利用形態があります。同じソフトウェアでも、「パッケージ購入」「ライセンス契約」「クラウド利用」など、購入形態を選択できることが少なくありません。それぞれの契約の特徴を理解し、コストも比較しながら検討します。
●管理
パッケージ購入、ライセンス契約の場合は、所持しているライセンス本数と使用本数を把握し、契約違反が起きないようにします。ソフトウェアが使用されているか、ライセンス契約はいつまでか、それらに不具合はないかといったことについて、専用の管理ツールを使って集中管理することもできます。
2.防犯・防災設備・備品
(1)防犯設備・備品
●購入
オフィスビル等に入居している場合の防犯設備は、ビル標準の設備をそのまま使用するケースと、入居時に相応の費用をかけて設置 するケースなどがあります。セキュリティカードや鍵などは、ビルオーナーに必要数を請求しますが、受付等、不特定多数が出入りするエリア にパソコンなどを設置する場合、セキュリティワイヤーでデスクなどに固定し、盗難対策を施します。
●管理
セキュリティーカードを社員に貸与する場合は、最小限の数に抑え、カード管理台帳を作成し、社員名、貸与しているカード番号、貸与日を記録しておき、紛失時などに速やかに無効化できるよう備えておきます。退職時には、カードの返却を退職手続きのチェック項目に加えておきます。また、ネックストラップとカードケースを一緒に貸与する事で、紛失防止に繋げる事ができます。
鍵の管理については、入居ビルの規則などで合鍵の作製が禁止されているか注意し、やむを得ず合鍵を作製する場合も最小限に数を 抑え、所有者を厳重に管理します。
(2)防災関連設備・備品
●購入
災害発生時に備える為の備蓄品として、ヘルメット、マスク、懐中電灯、ラジオ、非常食糧、飲料水、毛布、救急箱等が考えられます。非常食糧や飲料水は、賞味期限を揃えて購入することで、期限到来時に一括対応ができ、管理が容易です。毎年のコストを平準化したい場合は、1度に購入せず、数年かけて計画的に必要量を揃える方法もあります。また、パンデミック対策として、マスク、アルコール消毒液も必要数を確保しておきましょう。これらは、災害時やパンデミック発生時には品薄となり入手が困難となります。平時に備えておくと良いでしょう。
●管理
準備した備蓄品は、1ヶ所にまとめて備蓄すると、賞味期限到来時の入替えなどの管理は容易ですが、いざ必要な時に配るのに手間がかかってしまう恐れがあります。例えば、3日分の非常食糧と飲料水を用意する場合、2日分は個人管理や部署管理、残りは1日分は1ヶ所にまとめるなどの工夫するのも良いでしょう。
賞味期限や使用期限がある備蓄品は、購入時に、物品ごとの購入日、更新予定日を記入した台帳を作成し、期限切れとならないようにします。
3.照明・空調機器・オフィス家具等
(1)室内照明・補助器具
●購入
厚生労働省令で事務所の衛生基準を定めた「事務所衛生基準規則」では、事務所内の照度は、精密な作業で300ルクス以上、普通の作業で150ルクス以上、粗な作業で70ルクス以上が必要とされています。また、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、書類上及びキーボード上における照度を300ルクス以上と定めています。明るすぎても目の疲れなどの原因となります。
節電対策などで照明を間引いている場合も注意が必要です。必要に応じては、局所照明で補完することも考えてみましょう。
●管理
労働安全衛生規則では、労働者を常時就業させる場所の照明設備については、6ヶ月に1回の定期点検を義務付けています。照明器具の寿命は、10~15年といわれています。蛍光灯の寿命は6000~1万5000時間といわれています。不点灯となる前でも劣化によるちらつきなどが生じた時点で交換します。規模の大きいオフィスでは、1~2年の期間を設定して一斉交換する方法もあります。
(2)オフィス家具
●購入
机、椅子、テーブル、キャビネット、什器などは、価格にかかわらずオフィスで長く使うものです。収納スペース不足の問題が起きた場合、すぐに増設を検討するのではなく、書類の保存期限の設定が適切か、不要なものを保管していないか確認します。
●管理
什器は長い年月使用することが多く、購入日や購入先を忘れがちです。これも設置時に、備品管理番号を記したシールを貼り、管理台帳で購入日、購入先、製品保証期間などをまとめておきましょう。デスクの脇机、キャビネットなどで施錠ができるものについては、合鍵を集中管理し紛失時の対応に備えておくと良いでしょう。地震に備え、転倒防止器具が設置されているかどうか確認しましょう。
以上、資産ごとの購入や管理についてご紹介しました。初めのうちは慣れないこともあり大変ではありますが、継続して行うことで負担も平準化していきますし、無駄なものが無くなっていきます。上記を参考に取り組まれてはいかがでしょうか。
出典:企業実務2014・10「会社の備品・少額資産」の購入・管理ガイドブック
厚生労働省 東京労働局HP