
社会福祉法人 本部会計への資金使途制限
社会福祉法人の皆様、間もなく平成25年度の会計年度が終了します。
年度末は、当初予算の作成や決算作業の準備と忙しい時期になりますが、今回はそのうちの決算準備作業の一つを確認したいと思います。
介護保険サービス事業、障害福祉サービス事業、保育所事業、措置費による事業から本部会計への貸付金はありませんか?本部会計への貸付金がある場合、年度内に清算するご準備はお済でしょうか?
<資金使途制限の通知>
なぜ清算が必要なのでしょう?
介護保険サービス、障害福祉サービス、保育所運営費、措置運営費を財源とする各事業に対しては、いわゆる資金使途制限に関する通知(※1)が事業ごとに存在し、各通知には本部会計への貸付金は年度内に清算する旨が規定されています。
※1資金使途制限に関する厚生労働省の通知
「特別養護老人ホームにおける繰越金等の取扱い等について」
「障害者自立支援法の施行に伴う移行時特別積立金等の取扱いについて」
「保育所運営費の経理等について」
「社会福祉法人が経営する社会福祉施設における運営費の運用及び指導について」
<新社会福祉法人会計基準移行後の貸付金の把握>
これらの資金使途制限に関する通知は、平成23年7月27日発出された「社会福祉法人会計基準」(以後、「新社会福祉法人会計基準」とします)移行後の法人につきましても適用されることになります。
このことは、社会福祉法人会計基準と同日に発出された「社会福祉法人会計基準適用上の留意事項(運用指針)」の「6本部会計の区分について」に、次のように規定されています。
「本部会計については、法人の自主的な決定により、拠点区分又はサービス区分とすることができる。
なお、介護保険サービス、障害福祉サービス、保育所運営費並びに措置費による事業の資金使途制限に関する通知において、これらの事業から本部会計への貸付金を年度内に返済する旨の規定があるにも拘らず、年度内返済が行われていない場合は、サービス区分間貸付金(借入金)残高明細書(別紙10)を作成するものとする。」
つまり、本部会計を拠点区分とするかサービス区分とするかは任意なのですが、各事業から本部会計へ貸付金がある場合、次の財務諸表及び附属明細書を作成することにより貸付金の有無とその残高を把握することが求められているのです。
【拠点区分とする場合】
⇒貸借対照表
⇒事業区分間及び拠点区分間貸付金(借入金)残高明細書(別紙5)
【サービス区分とする場合】
⇒サービス区分間貸付金(借入金)残高明細書(別紙10)
このように新社会福祉法人会計基準では、決算時において各事業から本部会計への貸付金がある場合、財務諸表及び附属明細書に貸付金の残高を表示するがことが求められ、資金使途制限の通知に抵触していることを自ら公表することになってしまいます。
<旧社会福祉法人会計基準における貸付金の把握>
新社会福祉法人会計基準適用後は、財務諸表等によって本部会計への貸付金を明確に把握できますが、旧社会福祉法人会計基準ではどうでしょうか。
実は、旧会計基準の計算書類では、本部会計に対する貸付金の有無とその残高は把握しにくい仕組みとなっています。その理由としては、会計単位ごとにしか貸借対照表の作成が求められていないこと、経理区分間の貸し借りを把握する明細表の作成が求められていないことが挙げられます。
<資金使途制限通知に抵触しないために>
旧会計基準、新会計基準のいずれを採用されていても、日常の会計処理から本部への貸付金を把握できるように会計処理をする必要があります。通知に抵触しないよう、各事業から本部会計への貸付金有無とその残高を把握して、年度内に資金清算をしましょう。
まだ新社会福祉法人会計基準移行への経過措置期間ではありますので、移行されていない法人様も多いのではないかと思います。ご不安な点、ご不明点ございましたら、私どもコンパッソ税理士法人にご相談ください。