駐車場として子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益は誰に帰属するのか

今回は、土地の賃料に係る収益は誰に帰属するのかをめぐり、国税不服審判所で裁決された事例を紹介したいと思います。
この事件は、駐車場等として子の名義で賃貸された土地の収益が、子に帰属するのか、土地の所有者である親に帰属するのか、収益の帰属先の判定が争われた事件です。

1. 事実の概要
親(X)が土地をいくつか所有し、駐車場として賃貸していました。
Xとその子との間で土地を使用する旨の契約(使用貸借契約) 、及びその土地の上に敷設されたアスファルト舗装等を贈与する旨の契約(贈与契約)が作成され、その贈与契約書には「物件上において営む駐車場賃貸契約については、子がその地位を引継ぐこととする」旨が記載されていました。

2. 争点
この件は、Xの確定申告について収入の計上の誤りがあった(過大計上)ので、更正の請求をしたところ、請求の棄却をされた為Xと原処分庁との間で争いとなったものです。
この件は、「収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるか」が問題となっていました。
Xの主張:本件各土地は、Xの所有に属するものだが、子と各契約書が作成されたことにより、各駐車場の経営者としての地位ないし、本件各土地の賃貸人としての地位がXから子にそれぞれ移転している。よって、各駐車場の収益はXには帰属しない。

原処分庁の主張:Xは本件各契約書に係る契約について認識がなく、契約書の署名・押印の効力は認められない。また、各契約書は所得税率がXよりも低い子らに駐車場賃貸料の収益を帰属させるように見せることで、租税回避効果を狙ったもので、Xは各契約書の締結意思を有していなかったと言える。よって賃貸借契約は無効である。

3. 結論
各使用貸借契約及び贈与契約書には、親の意思に基づく署名・押印がありましたが、
(1) 各使用貸借契約及び各贈与契約は、各土地の所有権を親に留保したまま、その使用収益権限のみを相応の対価を発生させることなく、子に移転する方法として採られたものと認められる。
(2) Xは、調査の際、各契約書について一貫して知らない旨申述しており、各契約書の作成事実を認識していなかったと認められる。
(3) 各土地を巡る一連の取引は、子から相続対策の相談を受けていた税理士法人が企図し、各契約書の書式もその税理士法人が作成したものと認められる。
以上のこと等から、Xは各契約書の内容を確認することがなかったため、その内容を全く認識していなかった可能性が高く、各契約書にXの署名・押印があるとしても、各契約の内容自体がXの意思に基づくものとの推定は働かないため、Xの意思に基づいて成立したものとは認められず、結果、その収益は貸主名義(子名義)に関わらず土地の所有者であるXに帰属すると判断、審査請求を棄却しました。

契約書があるから大丈夫ではありません。
確定申告が始まる前に専門家にご相談する事をお勧めいたします。

<関係法令等>
(1) 所得税法第12条≪実質所得者課税の原則》
(2) 所得税基本通達12-1≪資産から生ずる収益を享受する者の判定≫

<出典>公表採決事例等/国税不服審判所

渋谷事務所 資産部 串田美幸


使用貸借…土地の貸し借りが行われる場合に、借り手は地主に対して地代を支払います。権利金の支払が一般的となっている地域においては、地代のほか権利金などの一時金を借地権設定の対価として支払うのが通例です。しかし、親の土地に子供が家を建てたときに地代や権利金を支払うことは通常ありません。このように地代も権利金も支払うことなく土地を借りることを土地の使用貸借といいます。


関連記事

■介護保険料の控除についての注意点

■健康保険証が交付されない間の病院受診対応

■ホームページ制作費の費用処理にご注意を

■社会福祉法人の「指導監査」に向けて

■日本企業が抱える人材育成の課題