相続税の課税価格の計算の特例と納税猶予の特例

相続税には、相続人の生活基盤の維持や事業承継を目的として、相続財産の課税価格の計算の特例(被相続人の財産の価格のうち一定のものを減額する規定)や、相続税の納税猶予(農業経営者である被相続人の農地に係る相続税や被相続人の経営していた会社の株式等のうち一定の部分に係る相続税の納税を次の相続等までの間猶予し、一定の要件を満たす場合にはその相続税が免除される規定)などの税制上の優遇規定が設けられていますが、今回はそれら課税価格の特例の規定と納税猶予の規定の概要について説明いたします。

小規模宅地等の課税価格の計算の特例
相続又は遺贈により取得した財産のうち、被相続人等(被相続人と生計一の親族を含む)が相続開始の直前に事業の用に供していた宅地等及び居住の用に供していた宅地等で建物等の敷地の用に供されているもののうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分については、一定の要件を満たす場合に限り、宅地の課税価格から一定の割合(8割又は5割)を減額することができます。

特定計画山林の課税価格の計算の特例
被相続人の親族が相続または遺贈により取得した財産のうちに森林経営計画の定められた区域内に存する山林及び立木のうち、この特例の適用を受ける選択をしたものについては、一定要件のもとに、その資産に係る相続税の課税価格から一定の割合(5%)が減額されます。

1.と2.の特例の併用については、その特例を受ける小規模宅地等の面積が限度面積に満たない場合に限って、その満たない部分に対応する価額について、特定計画山林についての課税価格の計算の特例の適用を受けることができます。

非上場株式等についての相続税の納税猶予
後継者である相続人等(「経営承継相続人等」といいます。)が、相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者である被相続人から取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限ります。)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
この猶予された税額は、経営承継相続人等が死亡した場合等一定の要件を満たす場合は納付が免除されます。なお、免除されるときまでに特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、猶予されている税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります。

農業相続人が相続した農地等の相続税の納税猶予
農業を営んでいた被相続人等から相続人が一定の農地等を相続し、農業を営む場合等には、農地等の価額のうち一定の価額に対応する相続税額については、その相続した農地等について相続人が農業を営んでいる等の要件を満たす限り、その納税が猶予されます。
この猶予された税額は、特例の適用を受けた相続人が死亡した場合等に該当することとなった場合には、その納税が免除されます。

山林を相続した場合の相続税の納税猶予
特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林(立木又は土地をいいます。)を有していた一定の被相続人から相続又は遺贈により特例施業対象山林の取得をした一定の相続人が、自ら山林の経営(施業又はその施行と一体として行う保護をいいます。)を行う場合には、その相続人が納付すべき相続税のうち、特例山林に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
この納税猶予額は、林業経営相続人が死亡した場合には免除されます

相続の際、相続人はどの優遇規定を受けるかを選択しなければなりませんが、必ずしも相続税額が全体で最も低い方法が最善とは限りません。被相続人の方の遺志や、事業承継する相続人がいる場合や、納税猶予の要件等を考慮したうえでどの規定を受けるのが最善であるかを判断する必要があります。そうなると、それぞれの場合で各相続人の相続税額は異なることとなりますので、相続人同士の意思の疎通も重要となります。
詳しい要件について知りたい方や、メリットやデメリットについて比較してみたいという方は、ぜひコンパッソまでご相談ください。

横浜事務所 岡野弘典

 

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