相続税における未上場株式の類似業種比準方式と純資産価額の選択についての判決事例

近年「生保年金二重課税事件」や「武富士贈与税事件」等徐々にでありますが、納税者が勝訴となる案件が増えてきました。そこで今回は、過去に制定された通達について課税時点の状況に照らし合わせた結果、納税者勝訴となった案件についてご紹介します。

案件概要
平成25年2月28日東京高裁において下記案件につき納税者勝訴となりました(東京地裁についても同様の判決結果)。
財産評価基本通達189(2) 株式保有特定会社の株式(抜粋省略)

判決概要
課税時期において会社の有する各資産の合計額のうちに占める(出資含む)株式の価額の合計額の割合が25%以上(中会社及び小会社については50%以上)である会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)によって評価する』という内容です。

争点
対象会社は、非上場会社であり平成15年5月31日時点で、
  資本金              4億3,200万円
  総資産額(帳簿価額)     2,120億円
  従業員数             5,300名
  直前期末1年間の取引金額 1,882億円
ペットボトルの製造販売ではトップシェアを有する株式会社であり、上場企業に匹敵する事業規模であるため、類似業種比準方式で評価を行いました。これに対し税務当局は、株式保有割合が25%以上であることから類似業種比準方式は認められないとして争いが行われ、事業規模に関係なく一律に評価する事が、合理的として認められるかどうかが今回の裁判の争点となりました。

上記の通達は平成2年の通達改正により制定されました。その当時は、資本金10億円以上の会社の平均株式保有割合が7.8%であり、25%以上もあれば資産構成が偏っていると判断されました。
平成15年当時には、平成9年の独占禁止法改正により、持株会社制度が解禁されたことから平均株式保有割合が16.31%に増加しました。この状況下において、25%以上が資産構成が株式に偏っているとまで言えなくなっていました。

裁判所の判断として、『「株式保有特定会社」に該当するか否かは、その企業規模等を総合考慮して判断するのが相当であり、実際に対象会社の従業員数・総資産価額・取引金額などをみると、その実態は上場企業に匹敵する。また、租税回避行為の弊害を危惧する事情なども伺われない。結果として対象会社の株式評価にあたっては「類似業種比準方式」で評価するべきである』との判決結果となりました。

今回の判決結果を踏まえて国税庁では、25%以上を50%以上に変更した通達を改正案として現在制定しようとしている状況です(平成25年5月7日現在)。
今後、現在情勢と税法との不釣り合いが様々な場面で生じてくる事が予想され、今回の様な事例も増えてくるものと思われます。納税する立場として納税に合意できない事例については、税務訴訟の検討も視野に入れる必要がある事をご検討下さい。

出典:税務通信

渋谷事務所 中澤将俊

 

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