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民法改正~相続税に与える影響はどうなる?~

2018年3月に遺産相続などに関する民法改正案が閣議決定され、相続分野の規定が約40年ぶりに大きく変わろうとしています。そこで、今回は改正案の大まかな概要と税務に与える影響について述べていきたいと思います。

⒈ 配偶者居住権の新設

 配偶者の居住権を保護するため、自宅の権利を「所有権」「居住権」に切り離し、夫婦のどちらかが亡くなった時に、遺産分割で所有権が別の相続人になったとしても配偶者は自宅に住み続けることが出来るようにするというものです。つまり、家そのものを取得するより評価額の低い居住権を受け取ることで、残る法定相続分で預貯金などを受け取れるようになり、生活の安定につながることが意識されています。

 原則として亡くなるまで権利を行使出来ますが、譲渡や売買は出来ません。

 居住権の評価方法等は発表されていませんが、評価額は平均余命などを基に算出され、一般に配偶者が高齢であるほど低くなり、所有権よりも安くなるように設定されると言われています。

 配偶者居住権には、亡くなるまで住み続けることが出来る「長期居住権」遺産分割が終るまで住み続けることが出来る「短期居住権」も創設されます。

⒉ 遺産分割等に関する見直し

① 特別受益の持戻し免除

 結婚して20年以上の夫婦であれば、生前贈与か遺贈された居住用不動産は、遺産分割の対象から外すことが出来るようになります。現行法では原則として、生前贈与された住居は遺産分割や遺留分減殺請求の対象となっていたものを、完全に配偶者だけの取り分とすることが出来るようになり、引続き当該自宅に居住することが出来ます。

② 仮払制度創設

 遺産分割前に生活費等を故人の預貯金から引き出しやすくする「仮払制度」が新設されます。改正が成立すると、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時の債権額の1/3のうち法定相続分までは他の相続人の合意を得ずに払戻しを行うことが可能になります。

③ 相続人以外の寄与分

 現行は相続人でなければ、遺言がない限り、遺産を分配されることはありません。改正案は相続人以外の被相続人の親族(相続権のない6親等以内の血族と3親等以内の配偶者等)でも介護を行ったなど被相続人に貢献した人は、相続人に金銭を請求出来る制度が出来るようになります。

⒊ その他

① 自筆証書遺言の改正

 自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないため、高齢者にとってはかなりの労力を伴うものであり、遺言内容の加除訂正についてもかなり厳格な方式がとられていることから、被相続人の意思表示が遺言に反映されない恐れがあるとの指摘がされていました。

 そこで、改正案は自筆による誤字などによるトラブルをなくすため、財産目録はパソコンでの作成を可能としました。また、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになり、その場合には、検認手続きをせずに遺言執行が可能になります。

② 遺留分基礎財産の期間制限

 現行は遺留分の基礎財産に含める贈与の期間制限はなく、相続人への贈与などは昔のものでも持戻しの対象としています。改正案は、相続開始前の10年間の贈与に限定することになりました。中小企業の事業承継では、遺留分制度が大きな障害となることがありますが、この改正により自社株贈与の早期移転がより可能になりそうです。

 

<参考文献>納税通信(第3515号(4)、第3520号(1)、第3524号(12))、税理(2018年5月号P2~10、P146~154)、税理士新聞(第1591号(9))

 

渋谷事務所 串田美幸

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