「家なき子特例」の適用とは?

 基礎控除額の引き下げにより、申告義務が発生する人が拡大し、相続税は一般家庭の方々にとっても身近な税金となりつつあります。その中で、残された資産の大部分がご自宅という場合に活用が多いのが、ご自宅等の土地の評価減に関する「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下、小規模宅地等の特例)」という特例です。

 これは相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人(故人)が住んでいた土地のうち、所有要件など一定の要件を満たす場合に、相続額の計算上一定の割合を減額するとういう規定です。適用するための要件は多く複雑なため、適用できるかどうかの判断は難しいので、適用をお考えの場合には注意が必要です。

 さて、小規模宅地等の特例に、「家なき子特例」という例外パターンがあることをご存知でしょうか?家なき子特例は、小規模宅地等の特例の原則と異なり、故人との同居を要件としていない点が大きな特徴です。相続税を納税するために、相続人が今現在住んでいる家を、手放さなければならない!という状況の回避が、この小規模宅地の特例ができた背景です。
 通常、家なき子特例の「家なき子」とは、文字通り持ち家がなく借家に住んでいる人、と簡単に説明されがちですが、ここには注意が必要です。この特例の基本的な要件は下記の2つです。

1.被相続人の配偶者及び同居相続人がいないこと
2.被相続人の自宅の土地を相続する相続人が、相続開始前3年以上、借家住まいである(相続人本人だけでなく、配偶者の持ち家にも住んでいない)こと

 上記2つの要件から、「持ち家がないこと」は要件になっていないことがわかります。つまり、持ち家を持っている、マイホームを購入済み、であっても要件を満たす場合があるということです。ここでポイントなのは、相続人がマイホームに居住していないことであって、マイホームがあるかないかは判断の基準とはならないという点です。

 例えば、被相続人の配偶者はおらず、相続人は子供3人というパターンで考えてみます。その子供3人は実家を出て、長男と次男は持ち家に住んでいて、三男は借家に住んでいるとします。このパターンでは、まず三男がこの適用を受けられるとともに、例えば長男が転勤等で賃貸借家住まいになれば、長男にも適用できる場合がある、ということです。

 インターネットで見た情報や、相続を経験した人の話を聞いただけの状態で、当事者のみで判断することは、無用な言い争いにも繋がり、心労の重なるご遺族に、さらに負担が掛かる場合があると思います。相続人同士で言い争っていても、事態が良い方向に行くとは限りません。それを防ぐためにも、一度ゆっくりと時間をとって専門家に相談することが有効なのではないでしょうか。

 お困りの際には、コンパッソ税理士法人までご相談下さい。

東京練馬事務所 小原 優衣


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