2016年度診療報酬改定と2017年消費税率引上げといわゆる損税問題

日銀によるマイナス金利の発動は、当初の景気の刺激という思惑とは違い、世界的な金融・資本市場の混乱と相まって、長期金利は初のマイナを記録し、少なくとも短期的には円高・株安の加速という現象を呈し、我が国の経済の先行き、あるいは社会保障改革の全般にも影を落としかねません。そのような状況の中、2月10日中医協の診療報酬改定の答申が提出されました。

平成28年度の診療報酬改定は、8年ぶりのマイナス改定としながらも、厚労省は診療報酬本体の改定率はプラスを維持するなど、医療費全体の伸びを3年間で1.5兆円に抑制するという枠の中で、メリハリをつけた方向を打ちだしたとしています。
今改定のポイントとして、
   1.地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化・連携
   2.患者本位の医薬分業・調剤報酬の見直し
   3.地域包括ケアの軸としてかかりつけ医やかかりつけ薬局・薬剤師とともにかかりつけ歯科の充実、訪問診療専門診療所の解禁
をあげています。

具体的には、かかりつけ医制度強化を象徴する大病院の初診時負担の高額化、重症度・医療看護必要度による急性期病床機能のさらなる絞り込み。他方、回復期・慢性期については、地域包括ケアの枠組みのなかでのポストアキュート機能、早期在宅復帰の役割の評価と、診療所については地域包括診療料の要件緩和や集合住宅での訪問報酬の見直し、また訪問診療専門診療所の解禁など、認知症対応を重点に在宅医療の充実を掲げています。
また、門前薬局への抑制、後発薬のさらなる推進とともにかかりつけ薬剤師の評価導入など薬剤報酬の合理化が目論まれています。

かたや2017年4月に予定される消費税の10%引き上げについては、軽減税率の議論に焦点が置かれていますが、医療・介護業界にとっては積年の課題である控除対象外消費税、いわゆる消費税の損税問題がどうなるか注目されます。この間、先の5%から8%への増税時の仕入れにかかる消費税の補填問題について、中医協の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」を中心に補填状況の見える化などを調査してきましたが、結論をいえば通常の病院・診療所については「補填状況にばらつきはあったものの、診療報酬の初診・再診料等のなかでの加算でおおむね補填されている」と結論され、問題は大病院、大規模施設での大型設備投資等案件での多大な消費税負担の補填にあるとしています。

病院団体を中心に現状の方法では限界があり、このまま10%課税になれば医療崩壊は目に見えているとし、保険診療の課税化、課税の上で免税、軽減税率の適用など抜本的な解決方法を検討すべきとしていますが、厚労省などは従来通りの報酬での加算に、大型投資案件への別途対応を併設する方向を基本としているようです。いずれにしても次回2017年にはこの問題に結論を出すとしており、注目されます。ただし冒頭に述べたような景気動向によっては、消費税率改定の先延ばしと衆参同時選挙などの可能性がささやかれ、予断を許しません。

代表社員税理士 丹羽篤

 

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