持分なし医療法人への移行計画認定制度について① ~制度の概要と改正前の状況~

改正前の認定医療法人制度

持分のある医療法人は「定款の定めるところにより、出資額に応じた払い戻しまたは残余財産の分配を受ける権利」があり、時価純資産に基づく持分の算定が可能とされています。この出資額に応じた持分の払い戻しは、医療法人の非営利性、剰余金配当禁止に抵触するとの疑義と、相続等に伴う出資持ち分払い戻し請求や、相続税の多額の負担による医療法人の存続の危機という両面から問題視されてきました。そのような観点から平成18年度の医療法改正で「持分のある医療法人」の新設は認められないこととなりました。同時に既存の持分あり医療法人(経過措置医療法人)からの移行促進のため、「持分なし医療法人」への計画的な移行に取り組む医療法人を支援すべく、国による「認定医療法人制度」が設けられました。期間としては平成26年10月1日から29年9月31日までの3年間の期間限定の制度でした。

 具体的には、医療法人の持分を相続等で取得した場合の相続税、あるいは出資持ち分の放棄による他の出資者への贈与税について、計画的な移行計画の認定を受けているときは、これらの相続税・贈与税の納税を最大3年間猶予するというものです。その後3年以内に全員の持分の放棄等を行い、解散時の残余財産の帰属制限、持分条項の削除などの定款変更により移行を完了した場合は、相続税・贈与税は免除するというものです。またこの認定を受けた医療法人の出資者や相続人への払い戻し請求に対する資金調達のため、福祉医療機構からの経営安定化資金を融資する制度が設けられました。

 現在のところ同制度の認定件数は60件少々、うち移行完了は10数件と低調です。移行のネックは、定款変更、持分放棄に際しての相続税法第66条第4項、すなわちその出資持ち分の放棄により親族等の相続税または贈与税の負担が「不当に減少」した場合は、医療法人を個人とみなし、医療法人に対し贈与税が課税される問題です。
不当減少にならないためには、以下の要件をクリアーすることが求められます。
① 医療法人の運営組織が適正であること
② 同族親族等関係者が役員等の三分の一以下であること
③ 医療法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
④ 残余財産を国、地方公共団体、公益を目的とする持分の定めのない法人等に帰属さ   せること
⑤ 法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽その他公益に反する事実がないこと
 特に①に関しては、理事6人、監事2人以上の要件のほか、その事業が「社会的存在として認識される程度の規模」を有し、医療計画への記載や救急告示要件など、社会医療法人並みの要件が求められ、一般の医療法人での達成は困難な状況でした。
こうした状況を打開し、制度を推進させるため、国は法改正と制度改正を行いました。
次回は法改正と制度改正によって、贈与税の適用要件がどのようになったかをお話致します。

川崎事務所 丹羽 篤

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