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成功する事業承継の要点 医療法人クリニック編 1

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病医院の事業承継をスムースに行うためのポイントを紹介します。
先の医療法の改正により今後の医療法人の設立は、基金拠出型を含む出資持分のない医療法人に限られますが、ここでは大部分を占める既存の経過措置型医療法人を重点に述べていきます。
医療法人は所有(出資持分)と経営が分離しており、理事(長)の交代により経営の承継は行われますが、併せて出資持分(社員身分)の承継の問題が発生します。

事業承継の進め方としては医療法人の状況により、
1.親族への承継
2.第三者への譲渡
3.他の医療法人との合併

の3パターンが考えられます。

1と2のケースを中心にその具体的事例(金額や背景はアレンジ)を紹介しながら、問題点・留意点を解説致します。

1.親族への承継のケース
(1)具体的事例による課題と対処
(1-1)理事長は70歳代後半で診療科目は内科。住宅地内で開業し個人で10年、医療法人設立後20年経過。
     近年、病気がちで入退院もあり、代診医師を4人併用しながら診療を続けている。この5年で、医業収入は年間1億5千万円
     から9千万円へとダウンしている。
     理事4名(理事長・院長夫人・子息医師病院勤務・子息配偶者)及びスタッフ10名(他パート医師4名)。
     診療所の土地・建物は理事長所有で法人へ賃貸。出資金額800万円で設立時の出資持分は理事長700万円、
     理事長夫人100万円で、現在の出資持分評価額は収益の低迷により額面の約15倍(1億2千万円)となっている。

(1-2)承継を見据え、子息理事が2年前より週1度来院診察し、既存の患者との接点を作るとともに、過去5年間で
     子息理事及び子息配偶者に理事長より毎年、額面で25万円(評価額で350万円前後)の出資持分を贈与してきた。
     現在の出資持分は理事長450万円理事長夫人100万円子息理事及び配偶者各125万円となっている。

(1-3)本年1月より子息理事は病院を退職し当院に専念するとともに、理事長も診療時間を調整しながら準二診体制をとり、
     新旧患者の確保、増加による診療収入低落傾向からの反転と代診医師給与の削減を計っている。

(1-4)このタイミングで世代交代をアピールする意味もあり、ホームページの作成、診療所の改装(二診体制対応、
     子息理事の配偶者理事は医師であり将来の従事も見据える)を行い、併せて電子カルテ導入とレントゲンのデジタル化も
     行った。

(1-5)当期は上記の設備投資がふくらむこともあり、理事長の交代と適正な理事長退職金の支給を行い、出資持分の評価額の
     引き下げを計り、相続時精算課税制度を利用した理事長夫妻からの持分の移動を行う。
     理事長は非常勤理事・医師給与に減額されるが、診療所の賃貸収入もあり生計は維持される。また今後反転上昇が
     予想される診療所の出資評価の増加による将来の相続税負担を、相続時精算課税の利用により現在の贈与時の評価額に
     抑える効果も期待できる。

(2)経過措置型医療法人の持分の承継、相続のまとめ
相続の開始前に、出資持分の後継者への集中とその社員・理事(長)への就任をスムーズに行っておくことが理想です。
(2-1)医療法人の社員(出資者)は、出資額にかかわらず一人一票の議決権を有し、また退社に伴う出資額に応じた持分の払戻や、
     残余財産の分配請求権があります。これらが後継者以外により無定見に行使されると、医療法人の運営だけでなく財務面
     からもその存続が危ぶまれることになります。 

(2-2)出資額限度法人や、持分の定めのない医療法人への移行による出資の評価の引き下げ等も選択肢ですが、同族要件を
     含め移行条件をクリアすることは、通常の医療法人には困難です。(平成20年7月の東京高裁で、解散時の残余財産の
     分配請求権は別にして、医療法人が存続し経営が継続している限り、退社による持分の払戻は出資額しか請求できない
     との判決があり、今後の最高裁の判断が注目されます。)

(2-3)持分の払戻や残余財産の分配は、出資額を超えた部分が配当として総合課税され、最高50%の課税となります。
     これを後継者等への出資持分の譲渡にすれば、譲渡所得として20%の分離課税で済みます。
     従って事例のように、出資の評価引き下げによる譲渡や贈与を併行させた、地道な出資持分の移動が有効です。

次回につづきます。

代表社員税理士 丹羽篤

 

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