医療法人の第三者承継の検討

従来、医療機関のM&Aはその医療機関の財務内容の悪化・業績不振からの脱却、かたや病院グループの拡大・既存許可病床の獲得(売買)といった側面から推進されることが主因でした。しかし近年では後継者難、相続・事業承継対策といった観点から有効な手段としてM&Aが取り上げられるようになりました。

M&Aとは通常、企業の合併及び買収を総称したものですが、医療機関については
   1.事業・資産の一部を売買取引により譲渡する方法
   2.合併により新設法人を設立、又は相手方に吸収され一つの医療法人として存続する方法
   3.社員・理事の入替えを伴う出資持ち分の譲渡による経営権の移動
という三つの手法が考えられます。

身内に承継者がいない場合は、1.の事業譲渡や2.の合併はなじみにくいと思われます。そこで3.の出資持ち分の(第三者への)譲渡を通じた経営権の移動・M&Aの手法について、少し詳しく述べてみたいと思います。

具体的には、第三者への事業承継は社員・理事の交代をともなう出資持ち分の譲渡という形をとります。

第三者承継の意義
譲渡側では後継者難や将来の多大な相続税発生への対処、理事長の個人保証や担保提供からの解放、医療機関に従事する職員の雇用の確保、創業者利益の確保とハッピー・リタイアメントの実現。譲受側では病床獲得を含めた事業の拡大・多施設経営などスケールメリットと人材確保の効率的実現。また患者や利用者の安定的確保を通じた新地域への展開・進出がはかれ、場合により経過措置型の持分ありの医療法人の取得も可能となります(医療法人格の単純売買とならぬような配慮は必要)。
併せて、地域での貴重な医療資源・医療拠点としての公益性の確保・存続という使命を果たすことにもなります。従来の法人格の許認可に変動はないため、手続的には社員・理事の変更のみで容易ですが、先に述べた譲渡法人の有する潜在的なリスクは継承されます。 

譲渡の方法
基本的には社員および理事(長)の交代と、出資持ち分の譲渡を通じて経営権の移動を行います。社員が理事を、そして理事会で理事長を選任する形で経営権は移動します。従ってまず社員の交代が必要ですが、医療法人の社員は出資の有無や大小に関係なく1人一票の議決権を有するので、社員総会でマジョリティを確保できる社員数の確保に留意する必要があります。
実際上、出資持ち分のある法人では出資持ち分の譲渡により社員(役員)の交代を行いますが、持分の譲渡価額は相対取引で決定され、時価純資産や収益還元、類似業種や類似会社との比準方式などで算定しますが、国税庁の算定とかけ離れた場合は税務上のリスクに注意する必要があります。退社して出資持ち分の払戻を受けることも可能ですが、配当として累進課税されるため、株式の譲渡としての定率課税との比較選択が必要です。また役員退職金として譲渡代金の一部を支給し、その後出資の評価、譲渡を行う方法もあります。
なお出資持ち分のない社団法人や財団法人の場合は、持分の譲渡による経営権の承継はできず、形式上は社員の退社と理事の交代で譲渡は終了します。そのため実務上は役員退職金の支給、引き続いての非常勤役員又は医師としての勤務に対する給与支給、前理事(長)が所有していれば診療所等の家賃の支払い等を通じて清算することになります。退職金としての適正額の判定やその後の勤務や賃貸の実態との整合性に留意するとともに、そのための資金の追加出資が必要になる場合も考えられます。

いずれのケースも第三者間での譲渡ですので、客観的な評価や行政との折衝・手続きなど、信頼のおける仲介者の選定も検討されるべきです。お問い合わせは、コンパッソ税理士法人までお寄せください。

代表社員税理士 丹羽篤

 

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