医療機関のM&Aとは

従来、医療機関のM&Aは、その医療機関の財務内容の悪化・業績不振からの脱却、かたや病院グループの拡大・既存許可病床の獲得(売買)といった側面が主因でした。しかし近年では、後継者難、相続・事業承継対策といった観点から有効な手段としてM&Aが取り上げられるようになりました。

M&Aとは通常、企業の合併及び買収を総称したものですが医療機関の場合、
    1.事業・資産の一部を売買取引により譲渡する
    2.合併により新設法人を設立、又は相手方に吸収され1つの法人として存続する
    3.社員・理事の入替えを伴う出資持分の譲渡による経営権の移動
という三つの手法が考えられます。

1.の事業譲渡
複数の病院あるいは介護、有料老人ホームなどを運営する売り手法人が経営のスリム化・合理化を、一方買い手側は事業の拡大・多角化という目的を、必要な人財・資源の調達など自前で立ち上げるよりスピーディに実現できるという利点があります。また、資産譲渡を通じた営業の売買取引であるため、売り手側に潜在する各種の医療訴訟・租税回避・隠れ債務などのリスクの承継は回避されます。
ただし、許可病床を含め譲渡側の許認可要件は原則引き継がれないため、病床の移行を含め新規に開設許可の申請手続きを、行政の理解を得ながら慎重にかつ時間をかけて進めなければならないというリスクがあります。 

2.の合併
複数の医療法人が合併により1つの法人になるスキームとして医療法57条で規定され、都道府県知事の認可が必要とされています。法的に手続きが明確化されており、社団法人は社団とのみ、財団法人は財団とのみ合併でき、また合併前の法人が双方とも持分のある社団法人である場合のみ、合併後も持分あり法人として存続できます。消滅する法人の権利義務は存続または新設する医療法人に包括的に移転し、1.の事業譲渡と違い消滅法人の潜在的リスクも同時に引き継ぎます。また、消滅法人の病院や診療所の許認可は廃止され、新たに新規の運営主体での開設許可や病床引継の承認が必要になります。
合併にともない課税問題が出資者と法人に生じますので、適格合併への配慮など税務の専門家とご相談ください。

3.の経営権の移動
基本的には社員及び理事(長)の交代と、出資持分の譲渡を通じて経営権の移動を行います。社員が理事を、そして理事会で理事長を選任する形で経営権は移動します。したがってまず社員の交代が必要ですが、医療法人の社員は出資の有無や大小に関係なく1人一票の議決権を有するので、社員総会でのマジョリティの確保に留意する必要があります。
実際上、持分あり法人では出資持分の譲渡により社員(役員)の交代を行います。持分の譲渡価額は相対取引で決定され、時価純資産や収益還元、類似業種や類似会社との比準方式などで算定しますが、国税庁の算定とかけ離れた場合は税務上のリスクに注意する必要があります。退社して出資持分の払戻を受けることも可能ですが、配当として累進課税されるため、株式の譲渡としての定率課税との比較選択が必要です。また役員退職金として譲渡代金の一部を支給し、その後出資の評価、譲渡を行う方法もあります。
なお持分のない社団法人や財団法人の場合は、持分の譲渡による経営権の承継はできず、形式上は社員の退社と理事の交代で譲渡は終了します。そのため実務上は役員退職金の支給、引き続いての非常勤役員又は医師としての勤務に対する給与支給、前理事(長)が所有していれば診療所の家賃の支払い等を通じて清算します。退職金の適正額の判定やその後の勤務や賃貸の実態との整合性に留意するとともに、そのための追加資金が必要になる場合も考えられます。
いずれのケースも第三者間での譲渡なので、客観的な評価や行政との折衝・手続きなど、信頼のおける仲介者の選定も検討されるべきです。

以上、簡単ですが医療機関のM&Aをご説明しました。M&Aを進めていくためには、専門家のアドバイスやサポートが必要不可欠ですので、上手に相談・活用して下さい。コンパッソ税理士法人でもお気軽にご相談頂けますのでご一報ください。

代表社員税理士 丹羽篤

 

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