変わる労働環境 新しい給与制度の作り方

「給与制度を見直したいが、どうしたらよいか?」
こうしたご相談をお受けする機会が年々増えていると感じています。

その理由を聞くと「能力は高くないのに勤続年数が長いため誰よりも給与が高い社員がいる」、「やってもやらなくても昇給額が同じなため、できる社員から不満が出ている」、「中堅以下の社員の離職率が高い」、「初任給水準を見直さないと若い人が入社してくれない」といったことがほとんどです。これは給与制度が、職務や役割ではなく、年齢もしくは勤続年数に重きを置いた制度になっているからです。いわゆる年功序列制度というものです。

① 年功序列制度の限界

年功序列制度は高度経済成長期に大きな役割を果たしてきました。優秀な人材が流出しないように考え出された制度ですが、終身雇用を前提とした「後払い型」の給与制度であると言えます。「若い時は給与が低くてガマンしてもらわないといけないけど、年齢を重ねれば重ねるほど給与が上がっていくから長く勤めてね」という制度です。しかし終身雇用という意識が労使ともに薄れていっている中においては、完全に機能不全に陥っていると言えます。
また特に中小企業では新卒者の採用が難しいため中途採用に力を入れていることが多いと思いますが、年功序列型の給与制度では、専門能力の高い魅力的な人材を採用することが難しくなってしまいます。給与の条件が合わず採用に至らないということです。
また社内にいる優秀な人材に関しても、給与に関する不満で多いのは「なぜ、あの人と自分の差がこの程度なのか?」というものです。絶対的な金額ではなく、身近にいる同僚との相対的な格差を見ているのです。
そして最後には、「自分の実力を正しく評価してくれる会社に行きたい」という考えになってしまい、貴重な人材が離れていってしまうことに繋がってしまいます。

② 時価主義の考え方を基本にする

こうした視点からも、社員の実力を時価で評価し、それに見合った処遇をすることが、労使ともにとって良いということが言えます。
ここで給与制度の設計において重要な方程式をご紹介します。

・担当している職務にはそれに見合った月例給与を与える
・成果をあげた社員には「賞与」を与える
・能力のある社員には役職や仕事そのものを与える

この方程式に沿った形で制度を設計し、後払いの要素を少なくしていくことが、健全な労使関係を生み出すことに繋がります。

③ 基本的な考え方

給与は何に対して支払われるのが最も労使の納得を得られるのか。月例の給与においては、一般職は「職務の遂行度」、管理職は「役割の遂行度」に対して支払われることの妥当性は極めて高いと言えます。年齢が同じでも担当する役割(責任)の大きさや遂行度が違えば、給与に差がつくべきです。逆に年齢が違っても、役割が違えば、逆転現象が起こってもよいのです。

④ 制度の作り方

ではどうすれば「職務の遂行度」や「役割の遂行度」を給与制度に反映させることができるのでしょうか。最も簡単なものとしては役職を設けて役職手当を支給することです。ただ役職を設けるだけではなく、役職に求める役割を明確に定義しておくことがポイントです。こうすることで役割の遂行度を測る目安にすることができます。
役職についていない一般職の社員には等級制度を使います。例えば「1等級に求める役割は○○」といったように定義しておけば、その社員が役割を果たしているのかの目安にすることができます。なお一般職の役割は職務(=仕事)と言い換えても構いません。この場合は「1等級でやって欲しい職務は○○」というように具体的に定義しておきます。また等級制度を使う場合は各等級に見合う給与額がいくらなのかをあらかじめ決めておきます。こうすることで担当している職務に見合った月例給与を支払うことができるようになります。
そして人事評価でこの役割や職務の遂行度を測って、会社が求めるレベル通りの遂行度であればB評価(普通)、求めるレベルには到達していないのであればC評価(まだまだ)、求めるレベル以上なのであればA評価(とてもよい)などとし、この結果を昇給額や賞与額に反映させていくのです。

⑤ 最後に

ご紹介したような給与制度では、単に社員の処遇を決めるだけではなく、人材の育成という大きな効果を得ることも可能です。是非参考にしてみて下さい。

 

 


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