成年後見制度の現在とこれから

 成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない人について、家庭裁判所から選任された成年後見人が本人の権利を守り生活を支援する制度です。概要については2013年のブログでも紹介していますので、今回は近年の改正点、課題および成年後見制度の将来について解説します。
 
⒈ 《法改正》死後事務について
 総合月刊誌Wedge(発行 株式会社ウェッジ)には、2017年3月号と4月号の2回にわたって「ある成年後見人の手記」と題した特集記事が掲載されました。2009年10月から2015年3月までの長きにわたる親族後見人の苦悩をつづった内容ですが、サブタイトルも「葬式代は後見人が自腹っておかしいやろ!」「なんでワシがせなあかん?見舞いにも来ない血族への相続」といった衝撃的なものでした。
 被後見人の死亡により成年後見事務は終了し、財産は被相続人に引き継がれることになります。しかしながら、相続人がいないあるいは疎遠である場合、遺体の引き取りや葬儀の手配、医療機関への支払といった死後事務については、その法的根拠が不明確なまま被後見人が携わる場合もあり、大きな課題となっていました。
 このような状況を受けて、2016年の法律改正により、後見人が行う死後事務の内容についてその要件及び範囲が明確化されました。具体的には、家庭裁判所の許可を受けて、成年後見人が相続財産の保存、医療費や公共料金の支払い、葬儀にかかわる契約等の事務を行うことが可能になりました。
 
⒉ 《今後の課題》医療行為の同意権
 私たちが医療機関で手術を受ける場合、患者本人やその家族が説明を受け同意することが通例です。一方、成年後見人には医療行為の同意を行う権限は付与されていないと解されていますが、親族でない後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士、市民後見人など)が病院から患者本人に代わって同意を求められ、現場で困惑するケースが増えてきています。
 日本弁護士連合会は2011年12月に「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱(案)」を、成年後見センター・リーガルサポートでは2014年5月に「医療行為における本人の意思決定支援と代行決定に関する報告及び法整備の提言」をそれぞれ発表しています。
 また、2017年5月に施行された「成年後見制度利用促進基本法」では、成年被後見人等の医療・介護に係る意思決定が困難な人への支援について具体的な検討を進め必要な措置を講ずることとされましたが、被後見人が適切な医療を受ける権利を確保するためにも、早急な法的整備が求められています。
 
⒊ 《制度のこれから》市民後見人の活用
 市民後見人とは、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家あるいは被後見人の親族でもない者で、地方自治体等の養成講座を履修し専門知識を身に付け、市町村長の推薦を受けて家庭裁判所から選任された後見人(社会福祉協議会等の法人を含む)をいいます。
 2016年に新たに後見等が開始された件数は全国で約3万4千件ですが、そのうち市民後見人(法人を含む)の占める割合は約4%に過ぎません。(「最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況」より)
 厚生労働省においては、2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。このシステムの構築主体は市町村であり、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされており、担い手の一人である市民後見人に期待される役割はますます高まっていくでしょう。
 

渋谷事務所 樫村邦彦

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