年次有給休暇の基礎知識 その3

前回に続き、「年次有給休暇(年休)」の基礎知識です。今回は内容を少し掘り下げて、会社(使用者)側の目線から、「年次有給休暇」をめぐる諸問題についてご紹介したいと思います。

年休を買取る必要はない
2年以内に消化できずに消滅してしまう年休や、退職時に残っている年休の買取を要求してくる労働者がいますが、使用者はこれに応じる必要はありません
年休は労働者の権利ですから、使用する・しないは労働者の自由です。つまり使用しないことも労働者の選択に任せられているのですから、消滅してしまうのは自己責任なのです。
また、年休は労働日にしか使えませんから、在職中に消化しておく必要があります。退職日時点で年休が残っていたとしても、これも労働者の自己責任なのです。
なお、会社の許可制などによって年休の使用自体を制限している場合は論外です。

溜まった年休を、退職日直前に一気に消化する労働者に対して
「年休の消滅は自己責任だから在職中に使い切らないと損」だと考えると、退職日直前に溜まっている年休を一気に消化しようとする労働者がいます。例えば、年休の残日数が30日ある労働者が、退職日1カ月前になって、「1カ月後に退職しますが、これから年休を消化したいので、会社には出勤しません」というケースです。
会社にしてみるとこれほど困ったことはありませんが、この場合でも年休の使用拒否はできません
使用者には、あくまで時季変更権が認められるのみです。しかしながら、今回のケースのように退職日までの全ての労働日に対して年休の届出があった場合、変更してもらうための別の労働日も存在しないわけですから、時季変更権も使えません。結果的に年休の使用を認めざるを得ないこととなります。
とは言え、会社(使用者)側としては、後任の担当者への業務引き継ぎや残務処理などをしっかり行ってもらいたいというのが本音です。
そこでひとつ考えられるのは、溜まっている年休分に相当する額の特別手当の支給を交換条件に、退職日までの通常勤務を労働者に交渉することです。事実上の年休の買上になりますが、年休を使用させずに無理に働かせると労働者の不満を煽り、退職後にまでトラブルの種を引きずることになりかねません。

年休を使用した労働者の精皆勤手当をカットできるか
精勤手当や皆勤手当は、一定期間において欠勤・遅刻・早退がない者について支給される賃金です。
では、年休を使用した労働者に対して精皆勤手当をカットすることはできるのでしょうか?

使用者の心情としては、年休を積極的に使用する労働者よりも毎日しっかり出勤してきてくれる労働者を評価したい、または、働いている者と休んでいる者で差をつけるのは当然だと考えるかもしれませんが、結論から言うと精皆勤手当のカットは許されません
労働基準法附則第136条では「年休を使用した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない」と定められています。年休を使用した結果、不利益な扱いを受けてしまうようであれば、労働者が自由に年休を使用することが妨げられてしまうためです。
ここで言う「不利益な取り扱い」には、精皆勤手当のほか、賞与額の決定や、昇給・昇格の決定などが含まれます。
ただし、どんな場合でも不利益な取り扱いができないかというと、そうでもありません。過去、年休使用者に対して行った皆勤手当のカットを有効とした判例もあります。しかしこれはかなり限定的なケースですので、やはり基本的には不利益な取り扱いは許されないと考えておいた方がよろしいでしょう。なお、この労働基準法附則第136条に罰則はありません。

以上、3回に渡って「年次有給休暇(年休)」について書いてきましたが、いかがだったでしょうか。
年次有給休暇(年休)」に関する基本的な知識を身につけて頂くことで、労使間の無用なトラブルの防止に役立てて頂ければ幸いです。

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コンパッソ社会保険労務士法人 特定社会保険労務士 横尾健司

 

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