定額残業代とは

労働基準法37条において、法定時間外労働(原則1日8時間、1週40時間を超える労働)を行わせた場合、その時間の賃金については、通常支払われる賃金に2割5分以上の率を乗じた額を割増賃金として支払わなければならないとされています。その他、深夜時間帯、法定休日、月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金率も定められています。

このように、割増賃金を計算する際には個々の労働者が行った割増賃金の対象となる時間数を把握し計算をしなければならないため、毎月一定の法定時間外労働が発生する場合は、定額残業代を支給することによって給与計算の一部を簡素化する手段があります。
しかし、単に定額残業代を支給するだけでは法定の割増賃金を支払ったことにならず、違法とされた裁判例もあるため注意が必要です。
毎月一定の定額残業代を支給することで割増賃金の支払いに代えるためには、種々の裁判例により概ね下記の要件を満たさなければならないとされています。

導入の要件
    1.法定時間外労働に対する対価性がある
    2.対価性以外の性質がない
    3.時間外手当の金額と対応する時間数が明記されている
    4.時間外手当を超える実際の法定時間外労働との精算をする

1.法定時間外労働の対価性について
法定時間外労働を行った労働者のみに例外なく支払われるのかどうかが対価性の判断の要素とされています。(アクティリンク事件、東京地判平24.6.29)
割増賃金は法定時間外労働を行ったということに対するものであるため、それ以外の労働者を対象とすることは対価性の一貫性がなくなってしまいます。

2.対価性以外の性質の有無について
業務上発生する経費を見越した額を含んでいたり、特定の業務遂行に対するインセンティブを含んでいたりするものは時間外労働に対する対価と認められないとされています。(アクティリンク事件、東京地判平24.6.29)
割増賃金は法定時間外労働を行った場合に支払わなければならないものであり、経費や特定業務に対するインセンティブの性質を持つものではありません。本来、事業主に割増賃金を課すことによって法定時間外労働を抑制する目的があります。

3.時間外手当の金額と対応する時間数の明記について
雇用契約書や就業規則において、時間外手当の額と対応する時間数を明記しておく必要があります。どのくらいの額が何時間分の時間外労働の割増賃金に当たるかを判別できない場合、割増賃金を支払ったことにならないと判断されています。(小里機材事件、最判昭63.7.14)(高知観光事件、最判平6.6.13)
   (例)給与規定第○○条 時間外手当は法定時間外労働の15時間相当額を支払う。
        計算式 (対象労働者の時間単価×125%×15)

4.時間外手当を超える実際の法定時間外労働との精算について
実際の法定時間外労働が時間外手当の時間数を超えた場合、その超えた時間外労働に対する割増賃金は別途支払わなければなりません。支給の際には時間外手当と超過分の記載も明確に判別できるようにしておきましょう。(テックジャパン事件、最判平24.3.8)
(例)時間外手当の金額は15時間分で設定されているが、実際の法定時間外労働が20時間だった場合、20時間-15時間=5時間となり、5時間分の割増賃金を時間外手当とは別に支払わなければなりません。

上記の4つの要件を満たし、必要に応じ就業規則の変更、届出、従前から所属している労働者については個別の同意等を得ることによって適法に定額の時間外手当を支給することが可能となります。しかし、導入すればそれ以上割増賃金を支払わなくてもよいというものではありません。実残業時間が定額残業代の対象とする労働時間より少ない場合はコスト増となり、多い場合は計算を簡素化するメリットも失われてしまいますので、どの時期にどの程度の時間外労働が発生しているのかの把握に努めることから始めることがよいでしょう。

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コンパッソ社会保険労務士法人 社会保険労務士 井関広文

 


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