自社株の贈与・譲渡に伴う課税関係

 事業承継が活発に議論される今日において、自社株贈与・譲渡を行うことも少なくないのではないでしょうか。今回は、自社株
贈与・譲渡する場合における評価方法課税関係についてご紹介したいと思います。
 
1.自社株の評価
 自社株贈与・譲渡するには、株価評価を行い、税務上適正な評価額で移転することが必要です。中小企業の株価は、
財産評価基本通達」の「取引相場のない株式の評価」の規定により評価することが一般的ですが、その取引の形態によって
算定される株価は異なってきます。

Ⅰ.贈与・相続の場合…「財産評価基本通達」の「取引相場のない株式の評価」

Ⅱ.譲渡の場合…Ⅰの評価方法に、下記の要素を加えて評価します。

.個人の場合において、財産評価基本通達における「同族株主」に該当するかどうかは、株式等の譲渡等の直前の保有株式数によること。       

.株式等の譲渡等をした個人が「中心的な同族株主」に該当するとき又は法人が、その発行会社にとって「中心的な同族株主」に該当
 するときは、その発行会社は常に「小会社」であるものとして評価すること。

.純資産価額方式の適用上、株式の発行会社が土地(借地権を含む)と上場有価証券を有しているときは、これらの資産は、その譲渡等の
 時(その事業年度終了の時における価額によること。

.純資産価額方式によって株価を算定するに際し、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと

2.株式の贈与・譲渡に伴う課税関係

 株式を贈与・譲渡する際には、取引の形態に応じた課税関係が生じます。特に、株式を評価額よりも著しく低い価額で譲渡
した場合には課税関係が複雑になる場合もあるので注意が必要です。
 
Ⅰ.個人から個人への譲渡

 個人間で株式を譲渡した場合に、著しく低い価額の譲渡とされたときは、株式の譲受者において、株式の時価と支払った対価との差額
相当額を贈与により取得したものとされ贈与税が課税(相法7)されます。なお、個人間の譲渡の場合には、譲渡者は常に実際に受け取った
譲渡対価での譲渡損益課税となります。
 著しく低い価額の対価であるかどうかの判断では、下記Ⅱの2分の1基準の適用はなく、個々の具体的事案に基づいて判定すること
になります。

※公開の市場で株式を取得する場合には、みなし贈与課税の適用はありません。

Ⅱ.個人から法人への譲渡

 個人が法人に対し、株式を著しく低い価額の対価で譲渡した場合には、時価による譲渡があったものとみなされて課税されます(所法
59①二)。この「著しく低い価額」とは、資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とされています(所令169)。
 ただし、同族会社への譲渡の場合には時価の2分の1以上の対価による譲渡であっても、「同族会社等の行為又は計算の否認」の
規定が適用される場合があるので、譲渡対価を慎重に決定する必要があります。

 なお、譲受法人については、時価により資産を取得したものとして課税が行われます(法法22②)。
 
Ⅲ.法人から個人への譲渡

 法人が個人に対して行った株式の譲渡価額が、時価よりも低額である場合には、譲受者に、一時所得、あるいは譲受者の立場により、
給与所得退職所得課税がされます。
 なお、譲渡法人では、時価との差額は寄附金等として取り扱われることになります。

Ⅳ.法人から法人への譲渡

 法人が法人に対して行った株式の譲渡価額が、時価よりも低額あるいは高額である場合、各々の当事者について、時価との差額は
受贈益寄附金等として取り扱われることになります。
 
 以上のように、自社株を贈与・譲渡する際には課税関係が複雑になっておりますので、移転をお考えの方はお早めに担当者までご相談下さい。

参考文献:
『新版 詳説/自社株評価Q&A』(㈱清文館)
『平成21年版 図解 財産評価』(財団法人 大蔵財務協会)  

渋谷事務所 川上 大輔

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