不動産取引におけるおとり広告

 引っ越しや部屋の住み替えを考えた時、かつては不動産屋さんの店頭情報をのぞいたり、専門の情報誌をめくったりといったことが物件を検討する際の最初の手段だったと思います。しかし今ではインターネットで手軽に検索することが当たり前になっています。
 そんな中で、不動産取引におけるおとり広告というものを耳にしたことがあるでしょうか。全く取引する意思のない物件や現実的でない好条件の物件を広告し、問い合わせてきたお客さんに対して、その物件は既に成約済みとして他の物件を紹介する行為等が思いつくと思います。
 おとり広告とは不動産の表示に関する公正競争規約(不当表示の禁止)では以下の3種類のいずれかに該当する広告表示のことと規定しています。

架空物件等…物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
契約済物件等…物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
意思なし物件…物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

 これらおとり広告は不動産公正取引協議会の自主規制である「不当表示の禁止」により禁止され、警告や違約金の課徴等の措置を受ける場合があります。またおとり広告は誇大広告の一つであり、宅地建物取引業法により宅建業者は国土交通大臣または都道府県知事による指導、指示、業務停止等の措置を受ける場合があります。
 しかし故意による意図的なおとり広告の掲示ではないにもかかわらず違反行為となる事例をご存知でしょうか。おとり広告の違反で最も多い事例は「契約済物件」の掲載であり、図らずも契約済み物件の削除を怠っていた場合であっても、おとり広告規制に違反していると言わざるを得ません。
 このような違反をしていた不動産事業者の大半に共通する特徴は、マンパワーと相反する量の物件を掲載していた、物件の管理、確認ができていない、「契約済物件=おとり広告」という認識がない、といったことが挙げられます。
 また貸主から依頼されている管理会社が、物件申し込み後のキャンセルや入居審査等に通らなかったといった事態に対応するため、不動産事業者への情報の遅れ、誤った情報の発信といったことにつながることもあるようです。
 インターネットを利用した広告は、多数の顧客が膨大な数の情報に容易にアクセスでき、また不動産事業者も情報の更新や管理が比較的しやすいため、今後も重要な広告媒体として伸びていくと思われます。その情報の正確性を確保するため、特にポータルサイトの広告の適正化を図るために平成29年1月より首都圏不動産公正取引協議会と不動産ポータルサイト主要5社が協力して、情状が悪質な事業者に対して一定期間、一斉に広告掲載ができなくなる施策が始まりました。それでも広告情報更新の遅れや削除忘れ等を完全になくすことは難しく、不動産広告を吟味する立場の私たちは広告情報を安易に鵜呑みにするのは危険です。他にも物件の情報や取引条件等が実際とは異なる不当表示の事例もあり、理由もなく条件のいい物件は、もしかしたら何か他に理由があるのかもしれないといった警戒心を持つことも必要なのかもしれません。

 ご不明点、ご相談等ございましたらお気軽にお問合せ下さい。

参考文献
「不動産広告の違反事例・相談事例」 平成28年度 公益社団法人東京都宅地建物取引業協会 城西ブロック研修会資料
「おとり広告」 公益社団法人全日本不動産協会HP 法律相談
「おとり広告の排除へ。借りられない物件はなぜ広告される?3つのワケとその対策」SUUMOジャーナルHP

東京練馬事務所 谷野文則


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