自発的な復興支援に見る経営力

TKC経営理念 「自利とは利他をいう」に通ずる企業の紹介です。東日本大震災後の日本のある企業が「無私の支援」、「利他の経営判断」を行ったその内容を紹介し、日本企業の価値観、日本人の意識のすばらしさをお伝えしたいと思います。

一つ目は、被災直後から経営理念に「全てを地域のために、お客様のために」を掲げ、緊急現金払いと代理払戻制度を実施した福島市に本店を置く創業70年を超える東邦銀行です。
経営トップからの「事故を起こさぬことより、お客様(被災者)の役に立つことを優先してやって良い。」との号令の元 又、日頃より「時間のかかる100点より素早い50点で良い。」、「思い切って三振しても良い まずはバッターボックスに立て。」との方針の明確化を計っていたことにより、全銀協よりも早くサービスの提供を実施し、結局事故も無く継続されました。このことは、トップのリーダーシップとそれに応えるフォロワーシップが浸透しており現場への権限委譲が十分に行われていた結果であると思います。

二つ目はヤマトホールディングス株式会社です。皆様ご存じのクロネコヤマトの宅急便です。
創業以来貫かれている社訓は「ヤマトは我なり」。この精神は全社員に浸透しています。
    経営陣が現場の行動を追認する、現場の思いを経営陣が報いる。
    失敗を恐れず行動しよう。何もしないでの文句が一番の罪である。

社訓に表現された以上の行動が震災発生直後から起こったのです。
全国からの救援物質を避難所に運びたい。と被災地域の宮城県の東北支店から始まった行動が、我々は物流のプロだからと自衛隊の管理下にあった救援物質センターの陣頭指揮を依頼される動きにまでとなったのです。

救助捜索活動は自衛隊がプロ、物流は我々がプロ、東北支社での自主的支援活動はやがて各支社にも広がっていきました。ヤマトの救援物質輸送協力隊は自らの輸送だけで無く、現地雇用の人々を指導し、数ヶ月後には彼らだけで現場を仕切り、完璧な流通を実行していきました。その後、全社を上げての支援は宅急便一個につき10円の寄付を一年間継続する決定をし、総額142億円の寄付金となったのです。
配達一個10円の寄付は宅急便を始めた当初の精神「サービスは先、利益は後」を実践したことで、理念に基づいた支援は、本業を通じた支援、社会的使命からの活動、現場への権限委譲とそれを支えるトップのリーダーシップの結果であると思います。

三つ目は富士フイルム株式会社です。当時のニュースでよく報道されていましたが、水に濡れた写真を現場のボランティアや自衛隊が洗っている姿を見て、我々は写真のプロなのだ、我々が写真を救済しなければいけないと写真救済プロジェクトが経営者の決断で全社プロジェクトとして立ち上がったのです。
自主的かつ積極的に取り組む有志からスタートした行動はやがて神奈川工場に写真を運び、洗浄するまでの大プロジェクトとなりました。富士フイルムの看板を背負っての作業は、写真文化を守り、発展させる企業としての使命感、想いが結実した行動でした。社員からは会社の原点を見つめ直す機会を与えてもらえたとの感謝の言葉があふれていたといいます。

以上3つの実例をご紹介しました。大きな災害に立ち向かうことにより、会社の存在意義を確認する良い機会を与えていただけたと、この他にも多くの経営者、社員の言葉が 印象的でした。

出典:光文社新書「日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場」田久保 義彦著

川崎事務所 高橋操

 

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