日本で一番大切にしたい会社

とても感銘を受けた書籍がありましたのでこの場を借りてご紹介したいと思います。
日本で一番大切にしたい会社」という本で坂本光司氏(法政大学大学院教授)の著作です。たまたま坂本氏の講演を聞く機会があり、その内容にとても心打たれたのがきっかけで著作を読むことにしました。

それでは、「日本で一番大切にしたい会社」とはどんな会社でしょうか?
簡単に言ってしまえば「人を大切にする会社」であるといえます。最近よく耳にする「ブラック企業」の対極にある会社とでもいえばイメージが湧き易いでしょう。坂本氏は会社経営とは、「五人に対する使命と責任」を果たすための活動であると定義しています。その五人とは、
    1.社員とその家族
    2.外注先・下請企業の社員
    3.顧客
    4.地域社会
    5.株主
であり、しかも1から5という明確な優先順位があり(巷では一番には株主の利益だなどと言っているものが多いですが)、その上でできるだけ多くの人を幸せにするのが会社の使命であるといっています。しかも、業績が良くない会社は外部環境や規模や業種が云々とよく言い訳をするが、五人に対する使命と責任を果たそうという意識が欠落しているからだと、そのような言い訳をバッサリ切捨てます。

そして、このような「日本で一番大切にしたい会社」の代表として日本理化学工業㈱を挙げています。同社はチョークを作っている社員が50名ほどの会社で、市場の30%を占め優良経営を続けているとのことです。特筆すべきは従業員約50名のうち社員の七割が障害者であり、しかも五十年間ほぼ毎年障害者の採用を続けているということです。
同社は五十年ほど前から障害者雇用を行っているそうですが、きっかけは障害をもつ二人の少女を採用して欲しいとの会社近くにある養護学校の先生の訪問でした。何度も断った末に、一生懸命にお願いをしている先生の姿に心打たれ、一週間だけということで就業体験をさせてあげることになりました。一週間が過ぎ就業体験も終わろうとしているとき、十数人の社員全員が専務を取り囲み、みんなの総意ということで正社員化のお願いをしたそうです。社員みんなの心を動かすほど、その子たちは朝から終業時間まで、幸せそうな顔をして一生懸命に働いていたのです。そして、社員みんなの心に応えて二人を正社員として採用することにし、それ以来障害者を少しずつ採用するようになっていったということです。
障害者を受け入れたものの、どうやって仕事を教えればいいのかもわからず、初めの頃は苦労の連続だったそうです。人を工程に合わせるのではなく、工程を人に合わせるために一人ひとりの状態に合わせて機械を変え、道具を変え、部品を変えていったりして、能力を最大限に発揮させられるよう創意工夫を繰り返しながら知的障害のある人を採用し続けそれが五十年にも積み重なりました。

あるとき坂本氏がこの会社を訪ねて社長(障害者雇用を始めた当時の専務)と話をしていたところ、応接室にコ-ヒーを持ってきてくれた年配の女性がいました。その方が行ってしまってから社長がぽつりと言ったそうです。「彼女です。彼女がいつかお話しした、最初の社員なんです。」彼女こそ五十年前に入社した二人の知的障害をもった少女のうちの一人だったのです。

ある関与先のオーナー様も病気療養中で通院を続けながらでも働きたいという方の採用を迷いながらも決めた際に、たまたまこの著作を読んだことが背中を押してくれたとおっしゃっていました。最近ブラック企業という言葉を報道で頻繁に耳にするにつれ、是非経営者の方には自社を「日本で一番大切にしたい会社」で取り上げられるような会社にしていただき、ひいてはこのような会社が世の中に増えていくことを願っています。

出典:あさ出版「日本で一番大切にしたい会社」坂本 光司著

千葉流山事務所 関口勲

 

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。