道を究める~ショパンコンサートから感じること~

今回は、いつもとは趣向を変えて音楽の話をお送りします。

ショパンと言えばピアノ、ピアノと言えばショパン」を思い浮かべられる方が多いかと思います。
たとえば『別れの曲』や『革命』などのサブタイトルで有名なエチュード、太田胃散のCMソングでおなじみの前奏曲等々、みなさんそれぞれにお好きな曲があろうかと思われますが、いったいショパンは39歳という短い生涯にどれくらいのピアノ曲を残しているかご存知ですか?
実は未発表曲を含めると212曲と言われています。

昨年は震災復興のためにと、チャリティーコンサートにずいぶん足繁く通いました。そんな中で最も印象に残っているのが、「横山幸雄…ショパン・ピアノソロ完全奏破 全212曲 世界記録更新チャレンジコンサート」(平成23年5月3日 開演(朝)8:00~終演予定26:00 東京オペラシティコンサートホールにて)というものでした。
実は今回が2回目とかで、前回は「ショパンが発表した166曲を16時間で演奏し、ギネスに登録」されたそうです。今回は、さらに未発表の46曲を加え、212曲を18時間で一気に演奏しようという試みです。(4部構成で、昼休み1時間のほか、各部の間に15分間の休憩あり)

3日の朝8時から夜中の2時まで、正確にはギネスの認定証授与式の終わったのが2時半でした。延々18時間、ずっとショパンの曲を聴いていたのです。始めのうちはどうなることかと不安でしたが、終わってみれば、あっという間の出来事だったような気もします。ただ座って聴いていただけなのに、達成感というのか、不思議な充実感のあるコンサートでした。
歴史的偉業の達成に立ち合うことができた満足感とでも言うのでしょうか。ただ単に多くの曲を長時間に渡って弾いたというのに留まらないクォリティーの高い演奏がそこにはありました。しかも、当然のことながら全部暗譜なのです。クラシックの世界の「底知れぬ凄さ」を垣間見たというのが正直な実感です。

演奏が終わった瞬間、期せずして皆自然に立ち上がり、スタンディングオベーションが始まったのです。私自身、クラシックのコンサートで立ち上がるなど、そんな経験は初めてのことでした。そして、夜中の2時過ぎだと言うのに、7~8割の聴衆が残っていて、皆口々に賛辞を送っている・・・。このコンサートは私にとっても得がたい体験でした。

道を究める」とは、「本当のプロ」とは、こういう人のことを言うのでしょう。
ショパンの曲は演奏家にとっても難しい曲が多いと聞きます。難しければ当然腕や肩に力が入り長時間の演奏に耐えられません。ところが横山さんは全く疲れを見せることなく、最後までほとんどミスタッチもなく、食事もとらず、正に「涼しい顔」で淡々と演奏していました。よほど力が抜けているのでしょう。それは持って生まれた才能もさることながら、不断の練習、努力によるところが大きいのではないでしょうか。
芸術も我々の仕事も、「道を究める」という意味においては変わるものではありません。本当のプロフェッショナルとはこうありたいものです。

因みに、横山幸雄さんはあの辻井伸之さんのお師匠さんです。
彼が例のピアノコンクールで優勝できたのは、「横山先生の直前の『1日炎のレッスン』があったから」だそうです。
横山先生は、自分のコンサートの直前であるにもかかわらず、1泊3日の弾丸トラベルでアメリカに渡り、一日ぶつ続けのレッスンをされたとか・・・そんな師弟愛にも私は大いに感動しています。

渋谷事務所 中川昭史

 

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