知的障害者の雇用実態

 障害者の雇用に理解の深い会社として、日本理化学工業ココ・ファーム・ワイナリーの名を浮かべる方が多いと思います。

 日本理化学工業は、全従業員81人中60人の知的障害者(内28人が重度)が働いている学校で使うチョーク製造を主とした会社です(平成27年4月現在)。会社創立は昭和12年ですが、昭和35年に2人を雇用したのがスタートでした。このような多数雇用を目指したのは、禅寺のお坊さんから「人間の究極の幸せは、1つは愛されること、2つ目は褒められること、3つ目は人の役に立つこと、4つ目は人に必要とされることの4つです。福祉施設で大事に面倒を見てもらうことが幸せではなく、働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにするのです」と教わったからだと、会長が回想されています。

 現在どれぐらいの雇用があるか厚生労働省の統計を調べてみると、平成25年11月時点の回答事業所(8,673社)において雇用されている知的障害者は4,632人であり、日本全国で推計15万人とされています。産業別にみると、卸売業・小売業で37.5%と最も多く雇用されています。次いで、製造業25.7%、サービス業14.1%となっています。前回調査(平成20年度)と比較すると、総計で雇用者数が増加し、全体的に雇用は着実に進展しているとみられますが、雇用するにあたっての課題として、「会社内に適当な仕事があるか」「職場の安全面の配慮が適切にできるか」「採用時に適性、能力を十分把握できるか」が多く、雇用しない理由として「適した業務がないから」、「施設・設備が対応していないから」「職場になじむのが難しいと考える」等あげられています。

 対応策の例として、「就業規則」等の社内で回覧する文書や仕事の指示などは解り易い言葉や簡単な表現で提示する必要があります。仕事の依頼時には、①何のために ②どのような方法で ③どの部分までを ④どのくらいの時間で など細かく説明し、理解してもらえるよう指示しなければなりません。理解した上で取り組んでもらわなければミスにつながり周囲にも影響が及びます。それに加え、一度依頼した仕事が次回できるとも限らない為、依頼するならばその都度同じ説明が必要になる場合が多々あります。ミスを避ける為にも、社員一体となった配慮が不可欠となります。
 また、雇用時に本人やその家族、もちろん社員も一番気にかかるところは、コミュニケーション能力です。「なじめない」という表現が適切かもしれません。助言しても他人の意見を素直に受け入れることが困難な方が多い為、周囲も距離を置くことも少なくないと思います。近年、理解が深められてきていますが、まだまだ周知されていません。働くことの意義は、対価としての収入で生活を維持する、持って生まれた能力や個性を生かす、働くことで社会人として自立を目指す、など私たち健常者と変わりはないのです。しかし、人と変わっているから、どうせここまではできない、ミスが多いから頼みたくない、などと周囲が思っているのが実情です。「今の仕事をずっと続けたい」「職場で困ったときに相談できる人がほしい」「ほかの仕事もしてみたい」という心の声に応えてあげられるような職場の環境づくりが必要です。また、「障害者の雇用の促進等に関する法律」もあり、企業側も体制を整え安心して働ける世の中になっていかなければならないと思います。

 有限会社ココ・ファーム・ワイナリーは、知的障害を持った人たちをはじめ、皆がいきいきと力を発揮できるようにつくられた会社です。1950年代、栃木県足利市の特殊学級の中学生たちとその担任教師によって山の急斜面に葡萄畑が開墾されました。1969年、この葡萄畑の麓で、支援施設こころみ学園(社会福祉法人こころみる会運営)がスタートしました。知的障害を持った人たちと葡萄畑でワインづくりを考えましたが、社会福祉法人には葡萄をワインにするための果実酒製造免許が下付されないため、1980年、一般の事業所である有限会社がこころみ学園園長の考えに賛同する父兄たちにより設立され、1984年、有限会社樺崎産業(後のココ・ファーム・ワイナリー)として酒類製造免許を取得しました。現在「足利呱呱和飲」「こころぜ」等、社員・園生一体となって美味しいワインを製造しているそうです。

興味を持たれた方、栃木の店舗はもちろん、オンラインショップもありますので、ぜひ利用されてみてはいかがでしょうか。

出典:厚生労働省 平成26年12月18日公表

千葉旭事務所 寺嶋久美子

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