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会計方針の変更に伴う税務上の取扱い

⒈ はじめに

日本経済は、米中の貿易摩擦やイギリスのEU離脱問題等から影響を受けています。また、その影響は、長期化を呈しています。このような経済の中では、卸売業や製造業は価格変動のリスクにさらされ、たな卸資産の帳簿価額と時価が乖離し、今後もその傾向が継続することが思慮されます。このような状態が続いた場合に、企業は、価格変動リスクを僅少にするため、たな卸資産の評価方法を変更する経営判断を行う可能性があります。

⒉ 会計方針の変更

たな卸資産の評価方法の変更は、会計方針の変更と言われます。会計方針の変更は、企業の実態をより正確に反映させるため「正当な理由」がある場合に認められています。但し、会計方針は原則として継続適用を前提としています。「正当な理由」の一つとして「企業の事業内容及び企業内外の経営環境の変化に対応して行われるものであること」があり、米中の貿易摩擦等による価格変動リスクが一例として挙げられます。会計方針を変更した場合には、新たな会計方針を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理を行います。当該会計処理を行うことにより、過年度の影響額は、当期の財務諸表の期首の資産、負債及び純資産に、会計方針の変更に伴って反映されることになります。

⒊ 税務処理への影響

法人税の確定申告書は、確定した決算に基づき作成されます。確定した決算に基づく申告とは、次のことを表明したものとされています。「法人税の申告は、法人がその決算に基づく計算書類につき株主総会の承認、総社員の同意その他の手続きによる承認を受けた後、その承認を受けた決算に係る利益の計算に基づいて税法の規定により所得金額の計算を行い、その所得金額及び利益の計算とその所得金額の計算の差異を申告書において表現するものであること」すなわち、株主総会等の承認を受けた決算書を基に法人税の申告が行われています。過年度の遡及適用を行う会計方針の変更は、この確定した決算を修正するものではありません。従って、会計方針の変更に伴う遡及適用が行われた場合でも、その過年度の確定申告において誤った課税所得の計算を行っていなければ、過年度の法人税の課税所得の金額や税額に対して影響しないと考えられます。但し、利益剰余金が前期末残高と当期首残高が不一致となることから、税務上は当期の法人税申告書別表において所要の調整を行うことが必要となります。

4,別表調整の具体例

当社は卸売業を行っており、昨今の経済の低迷から価格変動リスクを分散するため先入先出法から移動平均法へと会計方針の変更を行いました。その結果、期首のたな卸資産が会計上200から100へ減少し、期首の繰越利益剰余金が1,100から1,000に減少しました。なお、税務上の数値の増減は生じていないものとします。以上から別表4及び別表5(Ⅰ)を作成すると以下の通りとなります。

注)当期利益又は当期欠損の額及び繰越損益金の差引翌期首現在利益積立金額は、仮の数値を置いています。

出典元
1)国税庁、法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を摘要した場合の税務処理について(情報)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/111020/index.htm
2)日本公認会計士協会、正当な理由による会計方針の変更 https://jicpa.or.jp/specialized_field/pdf/00462-001319.pdf
3)税務研究会、税務用語辞典 確定決算の意義
https://www.zeiken.co.jp/yougo/法人税/課税所得計算の基本/確定決算の意義.html

コンパッソ税理士法人
渋谷事務所 飴谷 健二

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