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「決算書は未来への道しるべ」~社会福祉法人保育所経営のために~

社会福祉法人を経営の皆様方、理事会や評議員会が終わった後、決算書をどのようにされていますか?「決算報告も終わったし、行政への提出資料作成時に使用して、終わったら大事にしまっています・・・」これでは、勿体ないです。

もちろん、決算書の保管も大事ですが、もし仮に現状の経営状況が芳しくなく(決算報告でも少し辛い報告だった・・・等)、でも今期は頑張ろう、と思っているのであれば、決算書を今期やその先の未来をよくするために活用すべきなのです。

«経費率をみてみる»

決算書の中にある事業活動計算書ベースで言えば、サービス活動収益計に対する各経費の割合を算出し、これを平均的な数値と比較してみます。最も割合の高い人件費で考えてみます。

仮に平均的な数値が70%、自園が75%であった場合とします。他の経費(事業費、事務費、減価償却費等)が平均並みであった場合、利益として残せる分の割合は平均よりも5%低くなります。もし自園が赤字でその比率が2-3%程だとすれば、この5%を圧縮できれば黒字転換が可能になりますね。もちろんこれは人件費に限らず、他の経費についても同様に考えることができます。ただこれは、必ずしも平均より高いから悪いということではなく、そこにヒントがある、ということなのです。5%高いのであれば、なぜ高いのかを考えることをまず把握する必要があります。

«費用の中身をみてみる»

それでは次に中身をみてみます。収益は委託費や補助金で構成されていて、これらは定員の区分や地域等によってその単価が定められており、また職員配置についても決められているので、人件費率が5%高いということはやはり平均に比べてその分多くの支出が発生しているということになります。

費用=数量×単価

人件費で言えば数量は配置している職員数であり、単価は支給する給与や手当の額になります。他より高めであるということは、この2要素にいずれか、あるいはその両方が高めであるということですね。

<職員数が多いと思われる場合>
他と比べて配置的に多いかどうかは、他園のデータを入手が必要になりますが、それは難しいですね。ですので、自己分析が必要になります。例えばシフト表をみてみます。人手のいる時間帯とそうでない時間帯でうまくバランスがとれたシフトができているでしょうか。実際の現場で過剰な配置と感じられることはないかということも併せて検討してみます。反対に配置が薄すぎてもリスクが伴うので、適切な人数で適切に業務が行われているかを確認することになります。

<支給額が高いと思われる場合>
基本給や各種手当が高いかどうかは直接的には比較が難しいですが、ただこれらは給与規程に規定した額で支給されますから、さほどバラツキはないように思われます。一つ可能性があるのは残業手当です。保育所に限らないのですが、残業量の多寡は、各園によって様々です。ほとんど発生しないところもあれば、毎月のように多くの残業が発生するところもあり・・・。

もし後者に該当する場合はその残業の中身を確認する必要があります。なぜ残業が発生するのか、それは定時内ではできないことなのか。手数のかかることであれば、ICT又は外注でそれを省力化することはできないかなど。特に間接業務は注意です。給与規程自体も、働きに見合った規程になっていなければ、ロスが生じている可能性もあるので、その見直しも検討します。

と、ここまで分析的な話になってしまいましたが、掘り下げるともっと沢山の課題や詰めていくべき事項がでてくるものです。お話ししたかったことは、決算書は過去の実績を示すだけのものではなく、未来をよりよいものにしていくための ヒントが含まれている大切な書類だということです。

いかがでしょうか。会計は単なる数字に見えますが、事業活動の裏付けなので色々なことを鏡のように映してなかなか興味深いものですね。

横浜青葉事務所
砂田 力

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